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40代ミニマリストがグランドセイコーを選んだ理由|海外ブランドより大切にしたかった“静かな品格”

Ⅰ|40代になって、時計の意味が変わった

若い頃の時計は、自分を少しでも大きく見せるためのアイコンだった。
ロゴの存在感やスペックの強さが、当時の自信の代わりになっていた気がする。

しかし 40代に入ると、時計の役割が変わった。

それは“相手への敬意”や“どんな姿勢で生きたいか”を静かに語る道具。
誇張ではなく、佇まい。
主張ではなく、誠実。

そんな価値観の変化の中で、Grand Seiko が浮かび上がってきた。

Ⅱ|きっかけは、カメラだった

長く使ってきた Leica から、怪我をきっかけに Nikon へ持ち替えた。
そこで気づいたのは、
Leica は“カメラの美学”を貫き、Nikon は“ユーザー体験”を優先する
という、ものづくりの思想の違いだった。

日本のプロダクトには「相手に寄り添う設計思想」が宿っている。

時計も同じだった。

ただ精度が高いだけでなく、
持つ人の生活に自然と馴染み、そっと背中を押してくれる。

40代になり、この“寄り添い方の美しさ”が、やっと体の中に落ちてきた。

Ⅲ|日本のものづくりに、お金を還元したいと思った

今の日本は明るいニュースばかりではない。
働く人の表情にも、どこか疲れが漂う。

だからこそ、自分のお金で支えられるものがあるなら嬉しい。

もちろん、僕一人では大きな貢献はできない。
ただ、小さな循環の一部になれるなら、それは“生き方の選択”だ。

毎日身につける時計だからこそ、
日本の職人の技と誇りが詰まった Grand Seiko を腕に宿したかった。

Ⅳ|The CITIZEN ではなく Grand Seiko を選んだ理由

The CITIZEN の年差±1秒は、世界トップクラスの精度。
“理性の結晶”と言っていいほど完璧だ。

けれど僕が求めていた軸は、精度ではなかった。

Grand Seiko のデザインには、

  • 侘び寂び
  • 佇まいの美
  • 控えめな気配
  • 光で静かに表情を変える余白

といった、日本特有の“語らない美学”がある。
この“静けさ”が、40代の自分の感覚にしっくりきた。

参考記事:日本の時計が奏でる“40代の時間”─The CITIZEN と Grand Seiko。迷ったときの1本はどっち?

Ⅴ|GSに感じた2つの決定的な魅力

比較したポイントはいくつかあったけど、最後の決め手となった理由は二つ。
どちらもグランドセイコーだからこそ。という部分だ。

1|価値を安売りしない「孤高さ」

Grand Seiko は量販店で大幅に値引きされない。
Amazonで購入することもできないはずだ。
ブランド価値を守り、静かに佇む姿勢がある。

時計の価値を崩さない“孤高さ”。
それが今の僕には心地いい。

2|日付調整という“所作”が必要だった

The Citizenはエコドライブでの動作で年差±5秒の高精度に加えて、およそ100年はカレンダーも自動更新が可能だという。
一方で、グランドセイコーは、31日以外の月は日付を手動で合わせる。
これをどう捉えるか、は大事なポイントだ。

手間だと感じる人もいると思う。
でも、僕にはこの儀式が必要だと感じた。

2ヶ月に1度、カチカチと日付を合わせる時間が、
自分のリズムまで整えてくれるから。

便利ではないけれど、暮らしの節目を思い出させてくれる。
その“面倒くささ”が、むしろ豊かであり、道具としてのあり方な気がした。

ゆくゆくは機械式時計を持つとしても、やはり同じような道具としての楽しみ方をしたいと思う。

Ⅵ|あえて一番安い9Fクォーツ(SBGX261)を選んだ理由

機械式のGSも、スプリングドライブの白樺モデルも、美しい。
でも僕が選んだのは“最安の9Fクォーツ”。

理由は3つある。

  • 毎日つけて歩ける気軽さ
  • 高額GSと差分のないデザインの完成度
  • オーバーホールすることでまた次の10年も使える安定感

ミニマリズムは「減らすこと」ではなく、
削ぎ落としたあとに残ったものを、大切にする生き方だ。

まだまだ仕事の最前線で日本各地を走り回る僕にとって、
ガシガシ使える時計はマストだ。
だからこそ、この素朴で静かな9Fクォーツが“いまの自分”にちょうど良かった。

いつか本当にステージが変わったとき、
初めて機械式を迎えればいいと思っている。

それは背伸びではなく、成熟を選ぶということだ。

Ⅶ|40代の時計選びは、“生き方の翻訳”になる

時計は時間を知るための道具だが、
40代からは、それ以上の意味を持つ。

  • 自分の美意識
  • 働き方の姿勢
  • 相手への敬意
  • 誠実であること
  • 無理をしないこと

Grand Seiko は、それらを静かに翻訳してくれる。

派手ではない。
でも嘘もない。

静けさの中に、確かな品格を宿す時計。
だから僕は、Grand Seiko を選んだ。

結論|ミニマリズムの延長線上にあるラグジュアリー

ラグジュアリーとは“価格”ではなく、“姿勢”。
ミニマリズムとは“減らす”ではなく、“本質を残す”生き方。

その両方を自然に満たす時計が、
僕にとっての Grand Seiko だった。

静かに誠実でありたい──
そんな自分のための一本。

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Andy
メディアプロデューサー/プランナー|元ドキュメンタリー番組ディレクター テレビ番組制作を経て、2014年からウェブ広告業界へ。映像・グラフィック・デジタルを横断するディレクターとして、企業の広告戦略やブランド表現をトータルでプロデュース。現在はDot.のジェネラルマネージャーとして活動中。 一貫して「ディレクション」を軸に、メディアの変遷(テレビ → ウェブ → SNS)を横断しながら、その本質を言語化・体系化することに取り組んでいる。