ドラゴンボールビジネス論

ドラゴンボールビジネス論16 孫悟空の生き方に学ぶ、「好きなことで生きていく」の本質

さて、去年の3月から連載をはじめたこのドラゴンボールビジネス論もいよいよ最終回。 SNSが発展し、多くのインフルエンサーが生まれ、みんなが口々に言うセリフの一つがこれです。 「好きなことで生きていく」 好きなことだけで生きていけたら、最高だよな…と思う人は多いはず。 でも、本当でしょうか? もしかして、「好きなことで生きていく」を「嫌なことをしない」ための言い訳に使ってるとしたら? そのマインドでは、きっと「好きなことで生きていく」ことはできないと思います。 今回は主人公である孫悟空の生き方から、「好きなことで生きていく」という意味の本質を見つめ直してみましょう。

自力で生きていけるだけの能力がある

そもそも。の部分で、孫悟空は野生児に近い形で暮らしてました。 山奥でじっちゃん(孫悟飯)に拾われ、そのじっちゃんを亡くし、一人で魚を獲ったり、獣や恐竜を倒すことで食料にしてきたわけです。 この、どんな状態になっても自力で生きていける力があるかないかは、「好きなことで生きていく」ための大事な基盤になります。 もちろん、現代社会において獣を倒したり、魚釣りだけで生きていくのは簡単ではありません。 ですが、「どんな仕事をしてでも生きていける」という自信や覚悟があるかないかはとても大きな軸になります。 逆に言うと、そんな覚悟の一つもないのに、「好きなことで生きていく」なんて出来るわけがない、とも言えると思います。 「好きなことで生きていく」ということは、「全然好きでもないこと」をしてでも歯を食いしばく覚悟が必要です。

地道な努力ができる

これまでの孫悟空の修行を思い出してもらうとわかるのですが、孫悟空の修行はそのほとんどが地道な基礎トレーニングの繰り返しでした。 亀仙人のもとでは牛乳配達を続け、カリン様にあうためにひたすらカリン塔を登り、界王様に会うにはひたすら蛇の道を走り続けました。 単純な基礎トレーニングをこれほどまでに愚直に続けることができる人が、いったいどれだけいるでしょうか? スーパーサイヤ人になってから、ベジータとの差がついたのは、実はこの基礎トレーニングを幼少期にしていたかどうかの差ではないかとさえ思うくらいです。 おそらく天才と呼ばれていたベジータは、こんな地味な基礎トレーニングはこなしてないはずです。 いや、基礎トレーニングの大事さに気がついたからこそ、ブルマの家で重力室をつくり、トレーニングをするようになったとも考えられますね。 それくらい、基礎は大事です。 いまの時代、少しSNSでバズれば界隈には名が知られます。 そこから仕事につながることもあるでしょう。 そうすれば、もしかしたら「好きなことで生きていく」ことができる入り口に立つことは出来るかも知れません。 でも、基礎トレーニングなしにそれを継続していくことは簡単ではありません。 いま、SNSの中で名を成し、長くそのポジションを保っている人はこの「地道な基礎トレーニング」をひたすらに続けてきたひとばかりです。 そして、その背景としては「努力を努力と思わない」、熱中していたからこそできる感覚が必要です。 そう、「好きなことで生きていく」とは、もはや無意識状態でその生き方を選択し、そうなるように歩んできた人たちが到達しうる、いわば達人の領域。 そもそも、ブロガーになろう、とか、YOUTUBERになろう、とか、そうした目的先行ではなく、気がついたらそうなっていた人たちばかりのはずなのです。 だからこそ、振り返ってはじめて「好きなことで生きていく」と言えるわけですね。 孫悟空も同じです。 とにかくひたすら強くなりたかった。 でも、最初から宇宙一を目指していたわけではありません。 修行をすればするほど、目の前には強敵が現れます。 天下無敵の武天老師を超えたら、地球最強のピッコロが現れ、ピッコロを倒したら、はるかに強いラディッツが襲来し、ベージータ、フリーザ、セル、と次々と強敵が立ちはだかりました。 そんな強敵が現れるたびに、また乗り越えたいと思い、修行をする。 この積み上げこそが、最後に宇宙一が見えるところまで孫悟空を押し上げたのだと思います。

切り替えが早い

孫悟空の思考の切り替えの早さは凄まじいものがあります。 尻尾が切れても「ま、いっか」 筋斗雲を使うなと言われても「ま、いっか」 これはちょっとすごいです。 尻尾が切れた、というのはある意味で自分の肉体の一部が欠損したということですからね。 それを一瞬で「ま、いっか。」と言える人間がこの世にどれだけいるでしょうか? 髪の毛のカットが思うようにいかなくて落ち込んでるようでは、この境地に立つことはできないわけです。 そして、この思考の切り替えができないと、「好きなことで生きていく」なんてのは夢のまた夢ですね。 「好きなことで生きていく」ということは、ファンをつくる一方で、多くの敵もつくります。 クソリプならまだしも、誹謗中傷や炎上もある程度覚悟が必要かも知れません。 そんな中で、いちいち何かを気にしていたら、自分のやりたいことはできないでしょう。 過去は過去。 一瞬で切り替える思考も一つの能力であり、才能であると言えます。 また、悟空はこの切り替えの早さから、判断力もかなり高いです。 数年振りにあったチチに結婚しようと迫られ、「んじゃすっか。」という秒速の判断力。 これもまたすごいですね。 まさにファーストチェス理論を実践しています。 「ファーストチェス理論」というのは、チェスの名人が「5秒で考えた打ち手」と「30分で考えた打ち手」のうち、86%は同じ打ち手であったことが実証されたことから導かれた理論のことです。 考えても仕方ないことはくよくよ考えないってことでもありますが、あえて乱暴に言うなら、考えても無駄なことに思考のリソースを使わないってことですね。 成功者はこの直感力が尋常ではありません。 「好きなことで生きていく」のであれば、この判断力、直感力は大事にしたいところです。

目の前にある壁にいつもワクワクできる

孫悟空の凄さは、どんな状況、どんなヤバイ敵に対してもワクワクできることです。 これは幼少期の自分より強いやつと戦うのが楽しい。といった原体験に紐づいていると思います。 だからこそ、命の危機を感じるくらいヤバイ相手と戦っていても、思わずワクワクしてしまうわけです。 逆に言えば、孫悟空はこのワクワクがなければこれほどまでに強くなることはできなかったでしょう。 登場当時は悟空と同じくらいの強さのライバル達が、次々と強さにおいて置き去りにされていった理由がよくわかります。 ヤムチャやクリリン、天津飯などはまだ頑張ってついていっていた方だと思います。 わかりやすいところで、戦いに対して一切の喜びを感じていなかったヤジロベーが、初登場からほとんどその強さが変わっていないのが良い例ですね。 人は何かをなす時、必ずモチベーションが必要になります。 それが誰かのためであったり、所属組織や企業のため、というのも十分モチベーションにはなり得ます。 ですが、やはり最強なのは「自分のワクワクのため」ですよね。 自分から湧き出るモチベーションであれば、エネルギーが枯渇することはありません。 だからこそ、自分の好きな仕事をしている限り、どんなピンチに陥っても心折れることなく、なんとかしてやろう。と考えることができるわけです。 ピンチになればなるほどその能力が発揮できるのもわかります。 そして、だからこそ死地を脱すると強くなるというもの納得なのです。 これは会社企業や自分のプロジェクト、サービスでも同じですね。 大きな失敗をしたり、もう限界だと思うような局面を迎えることで、その死地をどう乗り切るかを真剣に考えます。 考えた先の経験は、どのようなものであったとしても必ず自分の糧になります。 どんどんワクワクしましょう。 それこそが、「好きなことで生きていく」の最大の秘訣だと思います。

ライバルを味方につける魅力

孫悟空の不思議な魅力の一つに「ライバルを味方につける」というものがあります。 天津飯くらいまではまだわからなくもないのですが、ピッコロなんてかつての大魔王です。 ベジータは地球に攻め込んできたとき、ツレのナッパによって仲間が何人も殺されているわけです。 それでも悟空は許して、味方にしてしまう。 しかも、自分から頼んでもいないのに、みんなが悟空の周りにあつまり、協力を申し出るのです。 もちろん、その時に共通のライバルがいるということもありますが、こうした人としての魅力はやはり大事になってきます。 「好きなことで生きていく」と決断したとき、それを良しとせずにいろんな声が飛んでくることもあるでしょう。 でも、そんなアンチすらもファンにできるだけの魅力があるとしたら、それはやはり才能なんだと思います。 そして、それは仲間思いであることと同時に、かなりドライな判断力も必要になってくるでしょう。 つまり、その人が本質的に自分の味方なのか、いい顔だけしている敵なのか、の判断ですね。 ちなみに悟空は地球を大切に思う一方で、その判断力はものすごくドライです。 おおよそのことは「大丈夫だ、ドラゴンボールがある」で片付けてしまします。 自分が死んでいるからこその余裕なのかも知れませんが、そこまでドライに判断できる人はそうは多くないでしょう。 味方や仲間であっても、自分(この時は悟天とトランクス)が戦うのに邪魔になると判断すると容赦無く切り捨てる。 このあたりもまた才能の片鱗を見ることができます。 やはり、「好きなことで生きていく」のは簡単ではありません・・・

自分の生きたいように生きる

いろいろと悟空の性格から「好きなことで生きていく」の本質をみてきましたが、究極はここです。 「ぜったいに働かない」この意思の強さですね。 象徴的なのはこのシーンの悟空の「・・・・・」。 あれだけファーストチェス理論を実践し、即断即決の悟空が迷っているわけです。 なんでも「ま、いいか」の精神で乗り切ってきたハズの悟空が、です。 それほど働くのがイヤなのです。 なぜなら、「修行にならない」からですね。 修行であれば牛乳配達は出来る。でも、もはや牛乳配達が修行にならない今となっては、それは悟空にとっては「やるべきではない」こと。 時間の無駄だということです。 自分はまだ魚を獲ったり、獣を倒して生きていけばいいと思いますが、嫁子供がいる人としてはかなりサイコです。 もちろん、この「働くのが当たり前」という考え方自体が、ボクらが今の世の中の常識に囚われているわけですが・・・ この、働かない。という判断さえ出来たら大丈夫。 ボクらはいつでも「好きなことで生きていく」ことが出来るハズです。 おすすめするかは、別ですけど・・・。 画像引用元 DRAGON BALL ©️鳥山明/集英社

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ABOUT ME
Andy
メディアプロデューサー/プランナー|元ドキュメンタリー番組ディレクター テレビ番組制作を経て、2014年からウェブ広告業界へ。映像・グラフィック・デジタルを横断するディレクターとして、企業の広告戦略やブランド表現をトータルでプロデュース。現在はDot.のジェネラルマネージャーとして活動中。 一貫して「ディレクション」を軸に、メディアの変遷(テレビ → ウェブ → SNS)を横断しながら、その本質を言語化・体系化することに取り組んでいる。