ドラゴンボールビジネス論

ドラゴンボールビジネス論⑨ピッコロ大魔王に学ぶ、世界を制するマーケティング入門

世界制服を企てるピッコロ大魔王の夢は孫悟空によって散りました。 しかし、みずからの全てを「生まれ変わり」に託し、その願いをつなぎます。 今回はその二世からマーケティング用語を学びます。

用語❶リブランディグ

「リブランディング」とは、既に存在するブランドを理想とするブランドに進化させるための「プロセス」であり「戦略」のこと。

時代や顧客ニーズの変化に応じてブラッシュアップできるかどうかで、企業の価値、イメージ、売り上げなどが大きく変わります。 再起にも有効ですね。

ある種「生まれ変わり」とも言うべきこの戦略により、ピッコロ大魔王は次世代(マジュニア)へと夢を託しました。 企業全体は一新されますが、その根底となる企業理念がしっかりと受け継がれているところがポイントです。

「世界征服」

このビジョンの共有が、リブランディグ後の躍進を支えます。

用語❷セグメンテーションとターゲティング

数多く存在する顧客を分類するのが「セグメンテーション」。そのうちの一部に狙いを定めるのが「ターゲティング。」です。

一杯400円の牛丼屋と、一食4000円の焼肉屋では、狙うべき顧客は違います。

顧客を狭めて、狙う。マーケティングの基本です。

これは初代ピッコロ大魔王も得意としていたところでした。 「天下一武道会の名簿から、腕の立つ武道家を見つけだし、殺害する」という目的を達成するために使っています。 この場合、ターゲットは「魔封波」を使える人間。 そのセグメントとして、人類の中から「武道家」を抽出しているわけです。 賢い。

マジュニアはこの考え方をさらに進化させました。 ターゲットは「孫悟空」です。 そして「孫悟空」が確実に現れる場所、つまり天下一武道会にセグメントしていきます。

これは、そもそも世界中から孫悟空一人を探し出すより遥かに効率的な手法です。 さらに、もし偶然見つけられたとしても、そのとき自分のコンディションがベストとも限らない。 あるいは孫悟空の周りには仲間がいて、一対一で戦えない可能性だってあります。

そうしたすべての懸念材料を除外して、孫悟空と一対一で戦い、葬りさるには、天下一武道会がベストだったというわけです。

これは、セグメンテーション・マーケティングから発展し、近年主流となりつつある「ワン・トウ・ワン・マーケティング」ですね。 一人ひとりの顧客に焦点をあてることで、一対一の関係をつくり、顧客のニーズに合った商品やサービスを提供し、長期的な関係づくりを目指していく手法です。

事実、ここから孫悟空とは長い付き合いになりました。

用語❸クロスセル

クロスセルとは「他の商品などを併せて購入してもらうこと」です。 ハンバーガーと一緒にポテトもいかがですか?の手法ですね。

ウェブサイトによくある「関連商品」や「レコメンド」などもこれにあたります。 ついつい余計に買ってしまう、これもマーケティングの基本ですね。 売り上げは、単純に考えれば顧客単価×顧客数で計算できます。

ナメック星に到着したピッコロは、ネイルと同化することでスーパーパワーアップを果たしました。 地球でかなり力をつけていたピッコロですが、ここではネイルの戦闘力を掛け算することに成功したと考えられます。 現代的な手法ですね。

昔のマーケティング(広告・宣伝)では、顧客数を増やすことに重きを置いていました。 マスコミを利用し、認知を高め、消費者を引きつけて大量に購買させる手法です。

しかし、これは人口増加社会という背景があってはじめて成り立つ手法といえます。 人口減少大国日本においては、これは通じません。

そこで、クロスセルにより「顧客単価」を上げていく手法を用いるわけです。 片方の数字を上げることで、掛け算したあとの数字を伸ばす。 ピッコロの同化には、この掛け算の法則が見て取れます。

こうしたセット売りは巷にあふれています。 ぜひ同化しようとしてるピッコロを街中で探してみてください。

用語❹アップセル

こちらもクロスセルと同様の手法で、顧客の単価を向上させるための営業手法の一つです。

商品の購入を検討している顧客や、以前商品を購入した顧客に対しより高額な上位モデルに乗り換えてもらうことですね。

ポイントは、クロスセルに比べて、さらに顧客単価が向上するところです。 例えばクレジットカードのゴールドやブラックカードへの乗り換えなどがそうです。 保険や金融商品の契約にもよく使われる手法ですね。 安価に提供したエントリー機から、プロ仕様の機器に買い換えてもらう場合もこのアップセルにあたります。

言葉としては知らなくても、これも世間に溢れています。 ピッコロの場合は、「神様との同化」がアップセルのようなものですね。

ネイルよりさらに付加価値の高い「神様」と同化することで、パワーアップだけでなく、広い知識を得ると同時に、次期神様(デンデ)の後見人としての立場を確保しています。

「顧客視点」はマーケティングの王道ですが、そこからさらに、顧客が気づいていない「価値」を見出す、市場を俯瞰する「神様」のような視点を持つことで、マーケティングを極めることができます。

商品の販売に限らず、ビジネスでも自分に何が求められているのか。何ができるのか。 このあたりは常に意識していたいポイントですね。

用語❺ロイヤルカスタマー

さて、最後の用語です。

特定の企業の商品・サービスに対しての忠誠心(ロイヤリティ)の高い顧客のことを指すのがこのロイヤルカスタマーです。

他社の商品・サービスを利用することなく、自社のみを利用してくれる、いわゆるリピーターや常連客と似た意味で用いられます。

企業が顧客をロイヤルカスタマー化するためには、顧客が求めるサービスを充実させることが重要です。

常に顧客の不満が生まれる芽を摘み、洗練したその顧客のニーズにマッチするサービスを提供し続けることが顧客の満足度を高め、ひいてはそのロイヤリティを高めることにつながるというわけです。

ドラゴンボールを利用する人間は、最終的には孫悟空(とその仲間たち)だけになりました。

そのため、ドラゴンボールの願いも1つから2つへ。

一度生き返った者も何度でも蘇られるようにと、顧客のニーズにあわせてサービスの充実がはかられて来ました。 (実際にやったのは神様デンデや最長老)

いささか「やりすぎ」という声が聞こえなくもないですが、地球存亡の危機にくらべたら、そんなものは無視というわけです。

界王神さまの助言も、最後は聞く耳持たずもはやクレームのようなもの。 しかし、それほど「ロイヤルカスタマー戦略」が重要だということですね。 覚えておきましょう。

最後に

さて、初期のピッコロの夢は「世界征服」でした。 実はこれ、神様と融合し、デンデの後見人となったことで叶ったとも言えます。

ピッコロのリブランディグ戦略、「平和キライ!」のキャッチコピーは変更しましたが、ビジョンはブレていませんでした。

そう、マーケティングは世界を制します。

画像引用元 DRAGON BALL ©️鳥山明/集英社

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ABOUT ME
Andy
メディアプロデューサー/プランナー|元ドキュメンタリー番組ディレクター テレビ番組制作を経て、2014年からウェブ広告業界へ。映像・グラフィック・デジタルを横断するディレクターとして、企業の広告戦略やブランド表現をトータルでプロデュース。現在はDot.のジェネラルマネージャーとして活動中。 一貫して「ディレクション」を軸に、メディアの変遷(テレビ → ウェブ → SNS)を横断しながら、その本質を言語化・体系化することに取り組んでいる。