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40代ミニマリストが選ぶ「語れるモノ」|人生を映す5つの相棒たち

「語れるモノ」こそ、自分を映す

ものを選ぶとき、僕が大事にしているのはデザインでも価格でもブランドでもない。
「これを、自分は熱く語れるか?」だ。

なぜ選んだのか。
どんな背景に共鳴しているのか。
自分の言葉で語れるだけの“理由”があるか。

語れるモノは、使い続ける理由になる。
そしてその積み重ねが、静かに“自分というスタイル”をつくっていく。

今回は、40代の僕の今を支えている5つの相棒を紹介しようと思う。
どれも実用性ではなく、思想で選んだモノたち。

結論から言うなら、いまの僕を形づくっている5つのアイテムはこちら。

・Grand Seiko(腕時計)
・GANZO 7QS-R(バッグ)
・Leica M4-2(カメラ)
・whoop-de-doo(革靴)
・MONTBLANC マイスターシュテュック(筆記具)

語れるモノは、暮らしのなかに“対話”を残す。
どれも使えば使うほど、思想がにじむ相棒たちだ。

1|Grand Seiko ─ 正確さではなく“静けさ”をまとう時計

最近仲間入りした新アイテムが、Grand Seikoの腕時計。
若い頃、時計は単に時間を知るための道具だった。
でも、40代になった今は、時間を“感じる”ための道具に変わった。

Grand Seikoの魅力は、精度そのものではない。
もちろん年差10秒という驚異のスペックはある。
けれど、それを声高に語らない“静かな誇り”に惹かれた。

ロゴは控えめで、デザインは語りすぎず、
ただ淡々と、美しく時間を刻む。

過剰な主張のない時計は、自分の熱量や思考を妨げない。
時計に支配されず、時間と共存できる。
そんなバランスが、今の僕にはしっくりくる。

Grand Seikoは「時間の精度」よりも
「成熟した静けさ」を選びたい人のための一本だと思う。

2|GANZO 7QS-R ─ ブランドではなく“思想で持つ”革カバン

一昔前なら、ルイ・ヴィトンやエルメスに憧れたこともあった。
けれど、結局手にしなかったのは、
単に高価だったからではなく──
「自分が語れるバッグじゃなかった」からだと思う。

40代も半ばになると、
ロゴを背負うためにバッグを持つ時代はもう終わる。

僕が求めていたのは、「自分の思想を語れるバッグ」。
GANZOの7QS-Rは、その価値観に真っ直ぐ応えてくれる。

循環型農業で育ったステアレザー。
裁断や縫製に残る職人の手の温度。
数年使うほど深みを増す質感。

語らなければ“ただのシンプルなバッグ”。
語れば“どこまでも語れるバッグ”。
この二面性がたまらない。

GANZOを持つことは、ブランドではなく“哲学”を持つこと。
そんな気がしている。

記事:40代ミニマリストが国産革カバンを選んだ理由—有名海外ブランドより大切にしたかったこと—

3|Leica M4-2 ─ 感覚を信じるためのカメラ

「風が撮れるカメラ」

幼い頃、カメラを構えた父がそう言った時の表情が、今も胸のどこかに残っている。
そんなキャッチコピーが存在しないことを知ったのは、実はつい最近。
自分がLeicaを手にしてからだった。

風が撮れる。と言う憧れが、僕をLeicaに導いた。
僕にとってLeicaは、“感覚を信じる自分”の象徴だ。

実は、M4-2は僕の生まれ年に発売されたカメラ。
つまりはバースイヤーライカなのだ。
時代を共に重ねてきた道具を、今、自分の手で使っているという感覚がある。

マニュアルフォーカスでピントを合わる。
シャッターを切るまでのわずかな“間”。
その面倒くささこそが、余白であり、視点を研ぎ澄ませてくれる大事な時間だ。

便利さを求めるのではなく、感性を選ぶ。
そんな日にこそ、フィルムLeicaを持って、僕は街に出る。

4|whoop-de-doo ─ 15年寄り添う歩みの相棒

革靴に強いこだわりはなかった。
だけど、唯一長く履き続けているブランドがある。
whoop-de-doo──浅草の靴職人文化から生まれた、日本のシューズブランドだ。

浅草は、革靴の街だ。
下町の工房と職人の繊細な仕事が息づく場所。
whoop-de-dooには、その空気がそのまま残っている。

この靴を語れる理由はいくつもある。

足に馴染むスピードが圧倒的に早い。
見た目の重厚さとは裏腹に、驚くほど軽い。
ディレクター時代──
1日中歩き、走り、深夜ロケも多かった頃でも
whoop-de-dooだけは足を裏切らなかった。

さらに、手入れが驚くほど楽だ。
ブラッシングだけで革は表情を取り戻し、
過剰なケアをしなくても深みが増していく。

そして何より──
スニーカー至上主義の僕が手放さなかった唯一の革靴だという事実。

浅草生まれの職人靴であること。
履き心地に嘘がないこと。
必要以上に“革靴らしさ”を押しつけないこと。
そして15年の時間が物語になっていること。

春に買い替える予定だけれど、
きっとまたwhoop-de-dooを選ぶと思う。
ブランドではなく、“自分の歩き方”にしっくりきた靴だから。

40代になって、
「何を履くか」よりも「何を選び続けるか」が大切になった。
whoop-de-dooは、僕にとって“歩き方の哲学”そのものだ。

5|MONTBLANC マイスターシュテュック 164 ─ 思考を整える筆記具

書くための道具ではなく、
思考を整えるための儀式。

MONTBLANCのこのシャーペンは、僕にとってそんな存在だ。

アイデアを出したい時。
自分を振り返る時。
感情を言語化したい時。

紙にペン先が触れた瞬間、
思考がふっと整う。

実は、もう10年以上使っているが、
いまだにこれは“手放せない理由のある一本”だ。

デジタルがどれだけ便利になっても、
あえて“書く”という行為の厳かさはなくならない。

言葉と向き合いたい日のために、
この一本をそっと近くに置いている。

記事:10年支えてくれたシャーペンの話──思考を深める“仕事道具”の選び方

モノは、思想の翻訳装置である

時計も、カバンも、カメラも、靴も、ペンも。
ジャンルは違っても、共通点がひとつある。

それは、どれも“語れる理由”を持っているということ。

語れるモノは、あなたの思想を外側へ翻訳してくれる。
ロゴでも流行でもなく、
「あなたがなぜこれを選んだのか」がにじむ。

もの選びは、暮らし選びだ。
暮らしは、生き方の翻訳だ。
生き方は、静かな選択の積み重ねだ。

あなたが今、語れるモノはなんだろうか?

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Andy
メディアプロデューサー/プランナー|元ドキュメンタリー番組ディレクター テレビ番組制作を経て、2014年からウェブ広告業界へ。映像・グラフィック・デジタルを横断するディレクターとして、企業の広告戦略やブランド表現をトータルでプロデュース。現在はDot.のジェネラルマネージャーとして活動中。 一貫して「ディレクション」を軸に、メディアの変遷(テレビ → ウェブ → SNS)を横断しながら、その本質を言語化・体系化することに取り組んでいる。