ボクはそれなりに本を読む方だと思うのですが、何度も読み返す本となるとそう多くはありません。
今回はその中の一冊、「すべての仕事はクリエイティブディレクションである」についてちょっと紹介してみたいと思います。
すべての仕事はクリエイティブディレクションである。
b y 古川裕也
こちら、めちゃくちゃ名著なので、ディレクションやクリエイティブ・ディレクターという仕事に興味のある方はぜひ読んでみてください。
また、クリエイティブに関わらない仕事であっても、その必要とする本質は同じだという趣旨で内容は進みます。
「ディレクションとは何か?」この本を通じて、ぜひその一端をのぞいてもらえたら嬉しいです。
クリエイティブ・ディレクターとは何か?
本著の中で、古川さんは「クリエイティブ・ディレクター」って仕事の内容を分解してわかりやすく解説してくださっています。
その中で印象的だったのが、クリエイティブディレクターは「概念係」だという定義です。
また、その概念を正確にシェア出来るのは、ロジックのチカラだけだとも述べています。
これはとても共感するポイントです。
誰もが「何となくこうかも・・・」と思うような考えや概念を明確に言語化して提示することはクリエイティブなプロジェクトを運営する上ではとても重要になります。
何となく、のままにしておくと、それはどこかで共通理解を失って破綻する可能性が高いからです。
だからこそ、「なんとなくわかります」のままにしておくのは危険で、なんでも定義、言語化することが大事なんだというわけです。
これ、すごく重要な考え方だと思っています。
ボクもよくTwitterで「概念の言語化」を試みています。
ある意味で実験的な部分も多いですが、やはり共通概念を言語化すると、そこに共感する人たちは多く存在することがわかります。
例えばこのツイートなんかはその代表例ではないかと思います。
若者にとっておっさんがウザいのって、おっさんから見た若者と、若者からみたおっさんの「距離感が絶望的に違う」ことから起きる価値観ギャップだよね。
おっさんからしたら若者はちょっと前の自分。
でも、若者からしたらおっさんは遥か先の未来。一度歩いた道は近く感じる理論に近いのかもね。 pic.twitter.com/F3W84WKPBE
— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) January 7, 2020
人は思った以上に自分の考えを伝えきれていないんです。
では、どうすれば良いのか?
それはもう、共通言語になるように定義するしかない。
それができて初めて、みんなが同じ方向に進めるわけですから。
そして、その言語化、概念化を実際の課題解決に役立てる思考法を「クリエイティブ・シンキング」と呼ぶのだと思います。
古川さんは、「クリエイティブ・シンキング」とは、「創造的な考え方で物事の課題を解決していくこと」だと述べています。
つまり、ディレクターにとっては必須の能力なんですね。
ディレクターというのは当然ですが、クリエイティブの制作進行だけをやってるわけじゃないんですね。
そこにあるのはクライアントの課題解決という基礎の部分になります。
クリエイティブディレクターの仕事は、突き詰めたら「課題→発想→解決」。
この流れをすべて考え、決定し、実行することです。
こういうと難しい考え方のような気がしてしまいますが、実は全ての仕事に通じる本質だと思います。
例えば、クリエイティブ業界でないビジネスシーンの中では、シンプルに、企画、提案、実行。と言い換えても良いかも知れません。
つまり、クリエイティブを必要としない仕事なんて、世の中にはないということを本著の中で古川さんは語っています。
さらに言うなら、これはビジネスに限らず、人生における多くのことがこの原理に基づいているとも。
クリエイティブ・ディレクターの仕事とは?
本著の中で古川さんの定義している「クリエイティブ・ディレクター」の仕事について、もう少し具体的に紹介してみたいと思います。
仕事1:ミッションの発見
混同されがちですが、ミッションと課題は違うものです。
「その問題が、本当の問題なのか?」
ミッションの発見は、課題からひとつ次元をあげて行う必要があります。
それを発見するためのキーワードは「そもそも」です。
例えば、おばあちゃん向けのイベント開催を告知するのに、わざわざウェブサイトを作る必要があるでしょうか?
それより、チラシを作って巣鴨で配布する方がリーチという意味での効果は高いと思います。
この本質を見ないままに企画をしても意味はありません。
課題の本質をとらえないと、いつまでも解決には至らないわけですね。
仕事2:コアアイディアの確定
課題解決において大事なのは、課題の本質を捉えた解決策のアイディアになります。
そのためには寄せ集めのアイディアの盛り合わせでは解決に結びつけるのは難しい。
だからこそ、不要な要素を全て削ぎ落とす必要があります。
古川さんは「ブランドの本質の本質の本質とは何か?をワンフレーズに凝縮する。」必要があると述べています。
アイディアに対して、あらゆる可能性を残そうとする人はクリエイティブ・ディレクターではなく、単なる邪魔な人。だとも。
なかなか厳しい言葉です。
でも、真理だと思います。
チームを最適に縛り、「宝」はその範囲にしかないと言うことが、クリエイティブ・ディレクターの最大の役割だと語っています。
仕事3:ゴールイメージの設定
「それで人は動くのか?」がゴールイメージ設定の一番大事な部分だと本著には書いてありました。
アイディアの意味を超えて「こんな感じ」を設計し、共感を形成し、人を動かすことが必要です。
そのためには、論理と概念だけでは済まない、表現のチカラを必要とする過酷なステージが待っているというわけです。
イメージをどれだけリアルに共有し会えるかは、クリエイティブチーム全体の課題であり、目標であり、クリエイティブ・ディレクターの重要な役目のはずです。
仕事4:アウトプットのクオリティ管理
当然ですが、クオリティ管理も大事な役目になります。
良い意味の異常値を発生させないと、広告は誰の心にものこらない。と古川さんは語ります。
広告だらけの世の中で、「?」や「!」を瞬間的に伝えることの出来るクリエイティブは難しいけどやりがいのある仕事です。
そのためにも、感覚を研ぎ続ける必要があるというわけです。
仕事にも、暮らしにも、ディレクションは役立つ
今回はクリエイティブのディレクションについての部分をピックアップして紹介しましたが、本著の最大のテーマは「すべての仕事はクリエイティブディレクションである」です。
つまり、どんな仕事においても、このクリエイティブ・ディレクションという仕事内容や考え方が役立つという趣旨で書かれています。
実は、今まで自分が意識していなかった部分もディレクションだったりする。
これは日常的によくあることだと思っています。
ぜひ、そうした意識で読んでいただきたい名著です。
すべての仕事はクリエイティブディレクションである。
b y 古川裕也
はじめてのディレクション
〜スペシャリストでないあなたが「見えないスキル」を形にする方法〜