最近、よくブランディングって言葉を聞くようになりました。
これはボクがクリエイティブ業界にいるから、というだけではないような気がしています。
この傾向には、大きく3つの大きな時代の流れが絡んでいるように推察しています。
一つは、やはり右肩上がりの経済成長が止まって長い年月が流れ、さすがにこれまでみたいに「良いものを作れば売れる」時代ではなくなったと経営者のみなさんが実感し始めていること。
もう一つは、マス広告からウェブ広告へと広告戦略の手法が多様化していき、大量に情報をばら撒いたらそのうちの何パーセントかはターゲットに刺さっていた時代から、しっかりと伝えるべき人を見定めて、丁寧に情報を渡す必要が出てきたこと。
最後に、若く、感覚の新しい経営者が3.11以降のこの10年で一気に増え、言葉としては「ブランディング」と言わずとも、自社の方向性を明確に言語化し、ストーリーを持ったプロダクトやサービスを展開するようになってきたことですね。
これら3つの大きな潮流を複合的に捉えながら、今回はこれから先の新しい時代に向けたブランディングの価値を掘り下げてみたいと思います。
宣伝広告とブランディングの違い
マスメディアを中心とした宣伝広告とブランディングには、大きな違いがあります。
宣伝広告とブランディングの違い
・宣伝広告は「売る側」が商品やサービスの良さを伝えるために発信する
・ブランディングは「買う側」が商品やサービスの良さを直感的に受信する
自分で選ぶ時代に宣伝は押し売りになる可能性がある。
長期での費用対効果はブランディングの方がお得だと思ってる。 pic.twitter.com/2ozLClGruL— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) April 17, 2020
・宣伝広告は「売り手」が商品やサービスの良さを伝えるために発信する
・ブランディングは「買い手」が商品やサービスの良さを直感的に受信する
つまり、良さを伝える方向性が全く逆なのです。
宣伝はこれから先の時代の中では、下手をすると押し売りになります。
つまり、この先のニーズにそぐわないシーンが多発する可能性が出てくるわけです。
テレビを家族全員が揃って見る時代なんてとっくに過ぎ去りました。
今はみんなが手のひらの中のモニターで、自分にとって必要な情報だけを探しています。
商品もサービスも、宣伝すらも、みんなが自分で選ぶ時代になったということですね。
ブランディングは大手企業だけのものという誤解
これだけブランディングという言葉がメジャーになりつつある中で、まだまだその言葉についていけてない企業さんも多いのは事実です。
「ウチにブランディングなんか必要ないよ!」
と、いうのはいずれも古くから経営を続けている中小・零細企業の社長さんのイメージです。
ただ、残念なことにブランディングとは、高級店や大企業だけがやるものではないんです。
近所の八百屋や魚屋だって、床屋だって、弁当屋だって、本来は必要なことなんです。
なぜなら、ブランディングのゴールは自分たちの事業のファンになってもらうことだからです。
逆に無意識でできてる人もいますよね。
おばちゃんの笑顔がステキなパン屋とか、ボロボロなのに味は絶品なラーメン屋とか、常に人気で人が絶えない店がそうです。
これは自然とその店の強みがわかりやすい形で顕在化したことで、事前とブランディングが成功した例だと思います。
でも、全員が全員、無意識にブランディングを成功させることはできません。
だからこそ、まずは本質をすくい出し、言語化し、消費者にわかりやすくビジュアル化していく必要があるのです。
もちろん、表層を整えるだけでは本質的なブランディングとは言えません。
その核となる方針を、企業経営者の方だけでなく、働くすべてのみなさんに理解してもらい、浸透させていく必要があります。
だからこそ、ブランディングには時間がかかるのです。
ポストコロナに必要なブランド力とは?
Office ioにご相談いただいてる企業さんも大企業さまからベンチャーさままで様々です。
今、圧倒的に消費が落ち込んでいるのは仕方ないとして、ポストコロナではこの「ブランド力」の有無がとても大事になってくると思ってます。
大企業は確かにすでにブランド力を持ってるケースが多いです。
でも、それがうまく機能しているかはまた別なんですよね。
大きな企業のブランドイメージが邪魔をして、個々のプロダクトにまでそのイメージが浸透していなかったり、齟齬を生み出している可能性がある。
だから、Office io では「プロジェクト単位」で一つ一つトータルデザイン、トータルディレクションを提案するようにしているわけです。
そのプロジェクトそのものをブランディングしているようなイメージですね。
今、すでに自社のブランドを確立してる。と思っている企業経営者の方も、この先の、ポストコロナという新しい時代に最適化されたブランディングになっているかどうかは、絶対に一度考えてみた方がいいと思います。
逆にいうなら、スタートアップやベンチャー企業はその辺りを軽やかに時代に合わせて整えていくスピード感があると思います。
これは実はかなりのアドバンテージですよね。
圧倒的に消費が落ち込み、今はそんな余裕がないのは当然かもしれません。
でも、そんな中で自社の商品やサービスの強み、本質を見つめなおし、また社内に向けてもミッションやビジョン、バリューを再定義することができたら、ポストコロナでの掛け替えのない、そして揺るぎない指針になると思います。
また、コアを確認できるからこそ、自分たちの見せ方がわかってくるわけです。
それが出来て初めて、ブランディングは機能します。
なんども言ってますが、おもて面を派手に飾ることがブランディングじゃないんです。
そんなメッキ、すぐに剥がれますから。
それより、自らの揺るぎない本質をどう引き出すか。
今、こんな時代だからこそ、その企業はどんな核を持って、どんなメッセージを発信していくのか?
この思考と視点が大事だと思ってます。
これから先のブランディングとは?
・時代のニーズを探り
・自社の強みを言語化し
・わかりやすく表現し
・企業の価値を向上させる
簡単にいうとこういうことです。
新しい時代、という言い方をしてますが、ブランディングの進め方の本質は何も変わらないと思ってます。
ただし、今の時代、新しい時代に合わせた設計はしなくちゃいけないと思ってます。
例えば、ダイバーシティ(多様性)や、ジェンダーレスな思考など、かつての時代にはまだ顕在化していなかった新しい価値観が今の世の中にはあふれています。
だからこそたくさん考えなくちゃならないし、明確に言語化する必要があるわけです。
ぶっちゃけ、客観視出来ないから一人でやるのはめちゃくちゃ難しいと思います。
外部からの客観的な目線と、本質以外を冷静に削ぎ落として強化するクリエイティブ・ディレクターとの協業をおすすめするのはそんな理由ですね。
例えば、ブランディングにはクリエイティブやデザインが大事だというのは間違い無いのですが、中途半端な知識からいきなりロゴやウェブサイトから作ろうとしてしまうケースがあります。
これは完全に逆ですね。
見た目から整えてしまうのは良くない。
中身を先に整えないと、見た目との乖離が生まれます。
これはブランディングをうまくディレクション出来ていない、よくある例ですね。
先にブランディング戦略があって初めてロゴが生まれる。
で、そこから他のクリエイティブ制作に派生していくわけですね。
ロゴは全てのクリエイティブの羅針盤です。
だからロゴが固まらないに何かを作ることは本来ありえないのです。
そして、ロゴはブランディングの指針が見えてないと作れない。
例えば、ルフィが麦わらをかぶる前に旗印を作ったら、海賊旗には麦わらが入らないですよね。
それでも「麦わらの海賊団」って呼ばれるか?って話です。
あの海賊団にとっては「麦わら」が持つ意味はものすごく大きい。
だから、麦わらの一味でないとダメだし、海賊旗には麦わらが描かれる必要があるということです。
ブランディングは経営戦略
繰り返しになりますが、ブランディングとは、他者からかっこよく見られたいからとか、そんな、なんとなくの理由でやるもんじゃないんです。
ビジネスを成功させるために必要不可欠な経営戦略だし、そして、その要となるのが「クリエイティブ」というわけです。
このイメージを感覚で捉えてる経営者は多いけど、実際にやってる人は実は多くないと思っています。
だからこそ、チャンスでもあるわけですが。
ブランディングは経営戦略です。
だからこそ、最適な方法で取り入れた方がいい。
そして、ブランディングは「戦略設計」と「アウトプット」の両輪があってはじめて機能します。
その二つの車輪をつなぐシャフトになるのが「クリエイティブ」だと思ってます。
戦略だけでもダメだし、アウトプットが先行しても継ぎ接ぎだらけの戦略になってしまいます。
これをコントロールしていくのがディレクションなんですね。
この部分が理解できてないと単なる見せかけだけの虚像をつくることになってしまいます。
自分たちが提供可能な本質的な価値はなんなのか?
何でもかんでも詰め込んで見せる時代は終わりました。
今や商品が機能的で良質であることは当然で、そこはあくまでスタートライン。
そこにどれだけのストーリーがあるか、情緒的な価値があるか、購入者の心を揺さぶる何かが必要になるわけです。
それを見つけ出し、丁寧に伝わるように設計してあげる。
デザインの価値とは本来こちらで、表面を美しく飾るのはその次なんですね。
だからこそ、まずは必要な情報を届けたい人に、きちんと届けること。
シンプルだけど、これがものすごく大事になるわけです。
繰り返しになりますが、ブランディングは大企業だけでなく、中小・零細企業にとってブランディングはとても有効な経営戦略になります。
特にこれから先の時代で、どう消費者に自分たちの価値を届けるかは一度見直した方がいいです。
最近ではローソンのPBのリデザインを佐藤おおきさんが担当したり、楽天が佐藤可士和さんを起用してデザインの底上げを行うなど、色々と動きがありました。
デザイン経営。
これからは大企業だけでなく、ありとあらゆるビジネスで取り入れていくべき大事な考え方だと思う。
市町村や国も組織という意味では同じ。佐藤可士和氏を起用、楽天が培った「デザインのチカラ」|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社 https://t.co/wVBYC5yMRk
— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) April 13, 2020
これは確かに潤沢な予算のある大手企業だからこそできることかも知れません。
でも、みんながみんな、佐藤可士和さんや佐藤おおきさんに頼まなくちゃダメってわけでもないです。笑
少額でも効果的な施策を打つことはできます。
ブランディングは長期的に考えて、小さな予算を継続的に組むのがおすすめです。
ぜひ一度、ブランディングのこと、考えてみてください。
告知
Office io では、中小・零細企業さま向けのミニマル・ブランディング・サービスを提供しています。
企業や商品販売、プロジェクトのコンセプトから設計し、揺るぎない方針を提案します。
・企業イメージを統一したい
・運営施設の内装を整えたい
・プロジェクトのコンセプトが欲しい
そうは思いながらも、月間100万単位のブランディング費用はとてもかけられない・・・という企業さま、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
Office io のこれまでのお仕事はこちらをチェック
Office io|トータルクリエイティブをデザインする。温楽ノ森ロゴデザインについて
Office_io|音符と休符をデザインする。温楽ノ森のコンセプトデザインについて
Office io|「I」をデザインする。株式会社インプレシャスさまブランディング案件【前編】
Office io|「I」をデザインする。株式会社インプレシャスさまブランディング案件【後編】
Office io|肩書きをデザインする。いずみの編集室さまブランディング案件【前編】
Office io|発想をデザインする。いずみの編集室さまブランディング案件【後編】
Office io|つながる情熱をデザインする。MUSICINGさまロゴ制作