ディレクション入門

ディレクション入門①ディレクションって、結局どんな業務なの?仕事内容を徹底解剖。

さて、先日はボクのOffice io でのクリエイティブ・ディレクションについて書きましたが、「そもそもディレクションってなんなの???」って部分がイマイチ曖昧だということも、クリエイティブ業界の価値向上は成せないのではないかと思っています。

なので、まずはみんなの共通理解としての「ディレクション」を掘り下げていきましょう。
もしかしたら、あなたが「ディレクション」だと思っているその業務は、実はディレクションの「一部」でしかないかも知れません…

ディレクションって何?

ディレクションって、実はめっちゃ定義がむずかしくて、それこそディレクター一人一人が独自の答えを持ってる、と言っても過言では無いんですよね。

正直、ボクもまだまだこの部分の言語化は模索中です。

カメラマンなら写真を撮る人。
イラストレーターならイラスト描く人。
デザイナーならデザインする人。

と、ある程度一言で言えるんですが、ディレクターはディレクションする人。
って言っても

うん?で?
ディレクションって何?

ってなるからですね。
ここを可能な限り具体化していくこと、ディレクションという概念をもっと広く世間一般に浸透させていかなくちゃなーとは常々思ってます。

さて、ボクの現時点でのディレクションの定義ですが、

「プロジェクト(業務規模)の大小に関係なく、クリエイティブをブレずに正しくゴールへと導くこと」

としてます。

このゴールの設定から到達までを正しく導ける人がディレクターです。

簡単に言うと、プロジェクト(クリエイティブ)の道標。

この「正しく導く」ために必要と思われる作業は全て「ディレクション」に含まれると考えています。
コンセプトデザインも、スケジュール管理も、チームマネージメントも、クライアント対応も…その全てですね。

ディレクションを分解する

このこざこざした「ディレクション」は基本的に二つの系統に総括されると考えます。
制作進行に関わる左脳部分と、クリエイティブの品質管理に関わる右脳部分ですね。
実務領域と感覚領域、と呼んでます。

また、この領域の2分割とは別で、対象者や対象物ごとにもディレクションは発生します。

・クライアントディレクション
・チームディレクション
・自分ディレクション
・etc…

関わる人が増えれば増えるほど、このディレクション対象も増えていくわけですね。
このあたりもまたぼちぼち紐解いていきたいと思います。

まずは上記の概論から「実務領域」と「感覚領域」に分類される「ディレクションを構成する業務」を一つずつみていきましょう。

もしかしたらもっとあるかもだけど、ひとまず現状で思いつく「ディレクション」を構成する「業務」を拾い上げるとこんな感じになるかなと。
もちろん、全部できないとダメということではありません。
不得意な部分は得意な人に補って貰えば良い。
それを考え、依頼し、うまくプロジェクトを進行させるのが「ディレクション」ですね。

実務領域

予算交渉・予算管理

そのまま、お金に関わる部分ですね。
フリーランスのデザイナー、イラストレーターさんなら特にこの部分はしっかりできていた方が良い部分。
言い値で受け続けるのではなく、しっかり自分の価値を金額に落とし込むディレクションをしたいところです。

スケジューリング

メンバーの数に関わらず、ここがゆらぐと正しくゴールにたどり着けません。
たとえ一人で制作するとしても必須な能力になります。
ディレクションの基礎能力の一つ。

制作進行管理

デザイナーさんやイラストレーターさんの進捗と合わせて、プロジェクト全体を俯瞰して滞りなく進めていくのがディレクションです。
個々の進捗を見るミクロの目と、全体の進捗を見るマクロの目が必要になります。
その二つの目で、適宜調整、修正、変更、交渉を繰り返していきます。
正しく導きましょう。

余談ですが、一人で仕事を受けてるフリーランスの方は、自分のスケジューリングはできるけど、その裏に動いてる全体の流れを見れてない方が多い印象を受けます。
自分の仕事は納期までにあげてるから大丈夫。と安心してませんか?
4月2日までにあげます!と伝えていて、4月2日の深夜にデータ連携した場合、それは「自分」のスケジューリングとしては正しいけど、「全体」としてはどうでしょう?

そのあたりが見えるか見えないか、これもディレクションのポイントですね。

リスクコントロール

リスクコントロールには予知、予防、対処、復旧の4ステージがありますね。
予知はリスクを予測し、最初から回避する、少し右脳よりの領域だと思ってます。
経験からの予測、予感なんかも必要になる部分ですね。
予防はそれよりリアルで、明らかにリスクになりそうな部分を予め潰しておきます。
予知よりも発生率の高いリスクに対しての対応です。
対処は起きてしまったリスクに対しての対応です。
だいたいみんなこれに消耗するので、出来たら予防、もしくは予知することで疲弊をなくしたいですね。
復旧はもう対処しようの無いトラブルに対する次善策です。
出来るだけ無いようにしたいですが、起きてしまったらここにどれだけキチンと向き合えるかも大事な要素ですね

スタッフィング

ひとつのプロジェクトを動かす場合、複数のクリエイターさんに入ってもらうことも多々あります。
その際、どのクリエイティブをどのクリエイターに任せるか、判断するのもディレクターの役目です。
もちろん予算とスケジュールをベースに、スキルを把握した上で参加交渉するところからになります。
案件やクライアントとの相性も考えつつ、得意分野を得意な方に振り分けられないと、プロジェクト自体が上手く回らないということにもなりかねません。
実務領域でありつつ、やや感覚的な思考も必要になるのかなと思う部分ですね。

ヒアリング

ようやく感覚領域に近づいてきました。笑
この能力は感覚と実務、両方を必要とします。

よく、「何を聞いていいかわからない」みたいな話を聞きますね。
ボクは「聞く」というより、クライアントさん本人の中にある答えを「探す」というイメージで質問を重ねます。
質問についても「どうですか?」みたいな漠然とした聞き方ではなく、「AとBだとどうですかね?」みたいな質問で、どんどん選択肢を提示します。
仮説と検証の繰り返し。これがヒアリングです。

プレゼンテーション

これも感覚領域が含まれますね。
これは一般的にイメージされる、スティーブジョブズのプレゼンに限らず、自分の作品、納品物をクライアントさんに見せるときにも必要な能力です。
極端にいうと、自己紹介もプレゼンです。
これは簡単なフォーマットに落とし込めば誰でもある程度できるようになるので、今度機会とニーズがあればzoomで講義するのもありかもですね。
話すのが苦手な人ほど、テンプレ覚えておくことをおすすめします。

感覚領域

いよいよ感覚領域に突入です。
こうしてみると、ディレクション業務ってほとんどが実務ベースなんですよね。
プロジェクトを引っ張ってるリーダー的に見えるかもしれませんが、やってることは制作の裏方です。
余談ですが、当然、向き不向きもあります。
自分にあった働き方を見つけましょう。

企画提案

企画を考えることはディレクション業務の中では花形業務だとボクは思ってます。
逆にここから携われない代理店業務とかだと、ボクはもう作業と割り切ってしまうくらい大きなウェートを占めています。(割り切りが良いかどうかは別問題として…)

これは先日のトークイベントでも話たのですが、一般的に企画が苦手だという人は

・知識不足
・経験不足
・リサーチ不足

です。
本を読んで、いろんなところに行って、さらに必要なことを調べることで、自分の中のアイディアが掛け算されます。
それが企画の種ですね。
それをみんなに良いと言われ、実現に導くためにはもう少しステップが必要です。

大事なのは「共感」です。

企画は最初は「自分がやりたいこと」でしかありません。
それを「他人が求めること」とイコールになるように説明する必要があります。
そのためには、巻き込もうとする人(クライアントさん含む)に「今より少しよくなる未来」を提示する必要があります。
それを落とし込んだものが「企画書」ですね。

コンセプトメイキング

企画と並んで、コンセプトをデザインすることもディレクション業務の中では花形だと思ってます。
もちろん難しい。だから、面白い。
ボクはデザインの半分はコンセプトで成り立っていると思ってます。

「どんなに素晴らしい造形でも、コンセプトがないものは子供の落書きと変わら無い。逆に、子供の落書きでも、ちゃんとしたコンセプトにハマるなら素晴らしいデザインになる。」

デザインは課題解決と世の中の公式的に言われますが、この課題を解決するためにはコンセプトが絶対的に必要だからです。
(デザインという言い方をしてますが、イラストなどすべてのクリエイティブに共通する話しだと思います)

さて、そもそも「コンセプト」ってなんなの?って部分。
これもなかなか言語化が難しく、ボクの中でもまだ確定しきれてないところがあります。
(辞書に載ってる言葉ではあまりピンときてないんです。だって「概念」ってのもまた抽象でしょう?)

現状のボクの中の定義としては「クリエイティブの方向性を決める揺るぎない軸となるべき本質」というところでしょうか。
この「クリエイティブ」にはデザインだけでなく、プロジェクトや企画・提案、記事や動画など、すべてが内包されると考えてください。

この「揺るぎない軸」が揺らぐと当然クリエイティブはうまくいかないわけです。
すべての事象に軸となる本質が行き届かないとダメなわけです。

さて、ここままた疑問ですね。
「本質」ってなんなの??

逆説的ですが、この「本質」こそがコンセプト。なんですよね。
無理やり言語化するなら、「徹底的に削ぎ落とした要素の中から見つけ出す、唯一無二の感覚を一言でまとめたもの」ですかね。

禅問答みたいになるんです。
ここはまだまだボクも言語としては捉えきれていない領域です。
また考えがまとまったらリライトできたらと思ってます。
今回はこのくらいでご容赦を…

クオリティコントロール

さて、最後の項目ですね。
クオリティコントロールもディレクターにとって重要な仕事のひとつ。
ちゃんとクライアントが望むものを提出できるか。
そのクリエイティブはちゃんとその先のユーザーに刺さるか。
いろいろ考えてクリエイティブの質をコントロールする必要があります。

ボクがいつもクリエイティブの良し悪しを判断する軸は究極的にはデザイン性ではあません。
ではどこで見ているか?

それは前回にもありましたが、「コンセプトに沿っているかどうか」です。

コンセプトに沿ってないアウトプットについては修正、調整を加えていきます。
そうしないとクリエイティブ全体がぶれてしまうからです。
ちゃんとした目的、狙いに沿ってつくられたものであるかどうか。
ここはディレクターとしてしっかりとチェックしてくべきところですね。

余談ですが、デザイナーさんがこちらのイメージを超えた良いクリエイティブをあげてくれることは、ディレクターの最大の喜びであり、楽しみですね。

余談ですが

さて、ここまで「ディレクション」を分解してきました。
いろんな要素の業務が積み重なって、ディレクションが成り立っていることがわかってもらえたかと思います。
これらの要素を駆使して、ウェブサイトの制作を進行する人を「ウェブ・ディレクター」と呼んだり、キービジュアルをメインとしたプロジェクト進行を管理する人を「アートディレクター」と呼んだりするわけですね。

ボクはキービジュアルに限らず、動画、ウェブサイト、パンフから雑誌、そしてOffice io のように、企業や団体の全体イメージ構築(コンサルとブランディング)に必要な全ての要素をディレクションしてます。

どの職業も「ディレクション」を基礎とした「ディレクター」であることには変わりありません。

クリエイティブ業界においてもまだまだ曖昧なディレクション、そしてディレクターの定期。
言語から、一般浸透させるまでにはかなりの時間と労力がかかりそうです。

でも、それをなさないとクリエイティブ業界全体の価値向上はできないでしょう。

だって、自分の言葉で説明できないものを誰が信用して広めてくれます?

自分でやるしかない。だからやる。

もし、この記事を読んで、少しでもディレクション、そしてディレクターの仕事に興味を持っていただけたら嬉しいです。

みんなでクリエイティブの価値を高め、広め、深めましょう。
その原動力となるのは、「ディレクション」です。

すべてのビジネスにクリエイティブで革命を!!

 

ABOUT ME
Andy
we.編集長/Design Offiice io COO./Creative Director|東京⇆京都の2拠点生活。| 企業の経営課題を解決するデザイン・コンサルやクリエイティブ・ディレクションやってます。|ミニマル思考と独特の着眼点で「?」を「!」にする発想・提案が得意。|日本のビジネスにクリエイティブの革命を起こしたい。