スッキリしない空模様。
週末はいつも台風を呼ぶ。
どうやら台風もこの行楽シーズンを楽しみにしていたみたい。
おかげでこちらは全く秋晴れを堪能できていないんだけど。
さて、行楽地だろうが家に引きこもっていようが、ヒトはいつもお腹が空く。
お腹が空いたら何かを食べる。
これはとても自然なこと。
料理をするには材料がいる。
これもまた、めちゃくちゃ当たり前のこと。
レストランで食べるにしても、家で料理するにしても、出てきた食事にはその「元」がある。
野菜だったり、肉だったり、調味料だったり。
どんなモノにも材料ってやつがあるし、材料をさらに分解していくなら、そこには原料がある。
質量保存の法則だかなんだかは知らないけど、無から有を生み出せる人はいない。
そして、それは実はデザインも一緒なんだよね。
決して何もないところから何かを生み出してるわけじゃない。
デザインにも原料はある。
時々発注側の方で、ここをいまいちわかってない方がいる。
デザインは無から有を生み出すものだと思い込んでる。
でも、残念ながらそうじゃない。
今回はデザインをするために必要な、等価交換の話。
デザインは錬金術ではないよって話をしようと思う。
デザインのレシピを作ろう
まず料理を作るときに大事なのはなんだろう?
「何を作るか」を決めることと、それを作るための「調理法」を明確にすること。
料理だとレシピがこれに当たる。
で、レシピを選ぶのには、目的があって、狙いがある。
なんとなく「今日はコロッケにしよう」と思いついたとしても、そこには「コロッケにしよう」と思いついた理由がある。
例えば、昨日が魚だった。
子供がコロッケを食べたがってる。
ツイッターで台風の日はコロッケという投稿を見た。
昼に見た3分クッキングがコロッケだった。
スーパーでジャガイモを特売してた。
理由はどれでもOK。
なんとなく思いついたはずのコロッケも、ちゃんとそれを提供しようとした理由が何かしらある。
だから、お母さんの言う「今日はコロッケよ。」の後には、言葉になっていない(なぜなら・・・・だから)が隠れてる。
デザインも同じ。
「何を作るか」がないと何も提供できない。
誰に、なんの目的で、どんなデザインを提供すると最適なのか。
それを考えて、デザインの方向性を決める。
こういうイメージで、こういう色合いで、こういうテキストを入れようという、おぼろげなイメージだってOK。
それを元に進めることができる。
で、作るものを決めたら、それを作るための準備をする。
料理なら「材料を揃える」ってこと。
カレーを作るときまったら、にんじん、じゃがいも、牛肉、玉ねぎ。
あとはご飯とカレールーは最低限必要。
これがないのに「カレー作って」って言っても、「は?」ってなるよね?
まぁ、少なくともまず買い物にいく。
スーパーに行って、牛肉より鶏肉の方が特売だったからチキンカレーにしようって変更するのもOK。
少なくとも、チキンがあれば作れる。
大事になのは、デザインを作るにも情報(材料)が必要ってこと。
タイトルは?
キャッチコピーは?
メインに入れる写真は?
詳細情報はどのくらい必要?
この材料が全然揃ってないのに、「デザインを上げて」って言うのは、何の材料も揃ってない冷蔵庫を指差して、「カレーを作って」って言ってるのと変わらない。
冷蔵庫はカレーを精錬できない。
どんなに優秀な三つ星レストランのシェフでも無理。
まずは材料を提示しよう。
何を買っていいかわからないなら相談してくれたらOK。
一緒にメニューから考えるのはディレクションという仕事の一部。
デザイナーさんがこれをやることもあるし、ディレクターという肩書きの人がやることもある。
これ、相談なしに、好きにやって。にすると、クライアントさんは甘口のカレーが食べたかったのに、クリエイター側は激辛カレーを作っちゃう、みたいな悲劇が起きる。
ちゃんと対等の立場で相談したいよね。
だって話しているうちにハヤシライスがいいとか、肉じゃがの方がいい、みたいな話になるかも知れない。
カレーを作ったかとから、味は変えられない。
その辺りもちゃんと最初に決めよう。
素材の味を生かすも殺すも発注者次第
素材を提供したら、あとはデザイナーさんの仕事。
そう思ってる発注者の方がたくさんいる。
半分正解で、半分不正解。
どんなに素晴らしいデザイナーさんだって、目の前にある素材を違うものにすることはできない。
例えば一流のシェフでも、刺身を生きた魚に戻せないように。
ミンチを元のブロック肉に戻せないように。
素材が足りない、お粗末、目的に合ってない場合は、そのデザインのアガリ(完成)はそれ以上のものにはならない。
もちろん、経験値が高く、スキルのあるデザイナーさんはそれっぽく見せてくれる。
でも、それは残念ながら見た目だけ。
無理して飾り付けた星型の人参が入っているくらいで、カレーの味が変わるわけじゃない。
だからデザインを作るための提供素材は吟味したいところ。
より良いものはないか、もっと高解像度のものはないか。
そうそう、デザイナーさんから「●●は無いですか?」と聞かれた時に、「ないです」と答えるのは楽かも知れない。
それで一つの仕事がなくなるわけだから。
でも、それはとても勿体無い。
それがあればもっと素敵なデザインが出てくる可能性が高いのだから。
探して、それでもみつからには場合は諦める?
ボクならこういう。
「その素材はありませんでした。使用目的はなんですか?別のもので対応できないか探してみます」
これがあるかないかで、デザインの上りは全然変わる。
発注して終わり。なんて仕事はないんだよね。
デザイン力と情報量は等価交換
さて、今回の本題。
発注者側も知っておいた方が良いと思うのは、「デザイン力と情報量は等価交換」だってこと。
情報量がデザインの質を支えるとも言える。
情報は多ければ多い方がいい。
素材もできるだけたくさん準備して、そこから取捨選択をする。
何の情報もなく作るロゴと、ちゃんと思いや理念を共有してから作るロゴでは完成度が違う。
事前情報を増やせば増やすほど時間はかかるけどデザイン到達点は高くなる。
まず情報ありきで、それをいかに削ぎ落とすかが大事なんだ。
最初からないものはどうにも足せないから。
もちろん、情報の量だけでなく、質も大事。
無関係な情報をたくさん集めるより、コアのアイディアとなる情報一つの方が良いデザインになる可能性は高い。
一流デザイナーはこのリサーチがすごい。
発注者側も、そのことを知っているだけで、情報提供の重要さがわかるはず。
デザインがダサかったり、イマイチだったりする理由の大半は、情報や素材がないから。
クライアント側から解決できることだってたくさんある。
丸投げではなく、一緒に創る。
そんな思いを持ってくれると、クリエイター側としてはとても嬉しい。
投げやりな発注で、冷え切ったレトルトカレーを一人食べるより、せっかくなら、美味しいカレーが食べたいし、みんなで食卓を囲みたい。
そう思わない?