いま、COOを担当しているOffice io で、CEOと「企業化」に向けた話し合いをゴリゴリに進めてるところです。
これまでは単なるクリエイターユニットみたいな位置付けだったioを一段高くし、企業としてやっていくための理念やビジョンをしっかり打ち立てて、30年、50年、100年と続く事業への一歩を踏み出すための礎とするためです。
これは来年の株式会社化を見越した重要な業務だと思っていて、それこそ朝から晩まで「企業化」について語り合ってます。
そのなかで、CEOが目指すべき方向性とイメージを示し、そのビジョンをCOOであるボクが言語化し、ミッション、ビジョン、バリュー、企業コピーなどにまで落とし込みました。
で、そのからの話が波及して、「自分の軸」という話になりました。
ioはCEOがやりたいことを軸に事業展開を考えている。
つまり、CEOと会社の軸、行き先は常に同じです。
でも、それを支えるCOOであるボクの軸はどうなのか、ということです。
この軸が全く同じでなくても、ある程度近くないとこの先々までは上手くいかないのではないか?という部分が根幹にありました。
確かに、古今東西、起業メンバーがそのまま同じ会社に残り続ける企業って多くはないようです。
必ずどこかで進む方向を違える。
これはまさしく、会社の軸や進むべき方向と、それぞれ個々人の軸と進むべき方向がずれていくからだと思います。
もちろん、これをいつまでも同じであるように強制するのはおかしい。
そんなわけで、一度ボクのやりたいことの軸も掘り下げておこう、という話になりました。
そうすると、いろいろと面白いことが見えてきたので、今回はその備忘録も兼ねた記事になります。
クリエイターに限らず、人間の本質的な部分の話になると思うので、よかったら読んでみてください。
やりたいことが無い人もいる
さて、これだけ精力的に動き回っているボクですが、自分の軸を突き詰めてみると、とりたてて「やりたいこと」がないことがわかりました。
これはかなり衝撃でした。
昔から自己分析は嫌いなのですが、それは結局自分の空っぽさに気がつきたく無いという自己防衛本能だったのかも知れません。
ボクの中身は虚無や虚空、虚ろだったのです。
なので、なんでもできる。でも、何もやりたいことがない。
まずはこれを受け入れることから始まりました。
ボクは1を10とか100にするのが得意です。
誰かの何かやりたい目標や情熱をそのまま自分のエネルギーに変えて、その方向を指し示し、そこに向けて共に走るのです。
そういう意味では、ここ一年くらいのオンライン・コミュニティでの活動がすごくわかりやすい事例でした。
コミュニティの立ち上げ期には、いろんなアイディアを出し、動き回り、自分ができることをどんどんやっていく、提案していく。
一方で、そのコミュニティや団体が安定期にはいると自分のなかでその役割が終わるわけです。
上昇気流に乗っているときはエネルギー全開で、多少の乱気流すらものともしないのですが、水平飛行に入り、自動操縦ができるようになると一気にガス欠になる。
面白い性質だなぁと自分でも思います。笑
余談ですが、すでに立ち上がっている、運営の完成されたコミュニティに参加したいと思わない、あるいは入ったとしても積極的に関わることが少ないのもそのためだろうなと分析しました。
そして、自分でコミュニティを立ち上げないもの、まったく同じ理由からだと推測されます。
まちがいなく、運営に向いてないからです。
なので、企業でもCOOというポジションが働きやすく、仕事においてもディレクションというポジションが得意なわけです。
ioは企業(組織)そのものが立ち上げ段階で上昇気流のど真ん中です。
さらに、ioの業務でクリエイティブ・コンサルをしてて面白い、情熱を注げるのも同じ理由だと思います。
常にその企業さんの上昇気流の中にいられるからです。
なので、ボクは目の前にある課題を解決することに長けているけど、自分から何かを生み出し、それをお金に変えることはしていません。
出来ないと言ってもいい。
何かを成すには他人様のエネルギーや課題が必要なのです。
好きと得意は違う
これはボクがトークイベントでよく言っているのですが、個々人の「好き」と「得意」は違います。
ボクは上で述べたような1を100にするのが得意です。
課題を拾い上げ、これでしょ?と提示し、その内容を言語化して解決策を提案する。
本質の発見と言語化はひとつの能力だと思ってます。
では、好きなことはないのか?という部分。
これ、少し矛盾するようですが、0を1にするのは好きなのです。
生み出すこと、クリエイティビティ、創造は昔から大好きでした。
ただ、それを自分の主力に添えるだけの熱量は持ち合わせていないのだと分析しました。
ツイッターでもつぶやいたのですが、本能に基づく三代欲求としての食欲、性欲、睡眠欲の上に、現代人を突き動かすエネルギーとしての社会的三代欲求があると思ってます。
・承認欲求
・金銭欲求
・表現欲求
このうちのどれか一つがずば抜けて高い人が、いわゆる現代の「成功者」と呼ばれる確率が高そうです。
承認欲求なら一昔前はタレント、芸能人ですが、いまはインフルエンサーがわかりやすい例だと思います。
(承認欲求が高い人はインフルエンサーになりやすいと思いますが、インフルエンサーが全員必ずしも承認欲求が高いわけではないので、その点はご了承ください)
社長になってモテたいとか、有名になって誰かを見返したいとかもこちらに入れて良いと思います。
金銭欲求はシンプルに「稼ぎたい」ですね。
圧倒的なビジネスセンスを持つ人は概ねこの欲求が高いと思います。
どうすればお金になるか、本能的に知っていて、またそれを実行できる人です。
かつて震災のときに、ペットボトルの水をネットで1000円で売っている人がいると聞いて愕然としました。
人道的にどうこうというのは別として、それを思い付くことができる。
さらには思いついたそれを実行できる。
これは一つの能力だと思うからです。
表現欲求はそのまま「自己表現」ですね。
デザイナーさんやアーティストはまさにこのエネルギーがすごい。
ioのCEOもそうです。
先ほどのインフルエンサーさんの中には、承認欲求よりも表現欲求の方が高い人もいるはずです。
ダンサーや一流の俳優さんもこちらかも知れません。
余談ですが、この社会的欲求の上にあるのは、もう特別階級的欲求だとおもってます。
・支配欲求
・貢献欲求
・改革欲求
で、さらに上には神仏的欲求。
・慈愛欲求
・救済欲求
・解脱欲求
マザーテレサとか、ガンジーみたいな、歴史上の偉人クラスの欲求。
欲望に天井はないのかも知れません。
さて、話が大きくズレましたね。
戻しましょう。
すくなくとも、凡人であるボクを突き動かすのは社会的欲求なわけですが、驚くことにボクはこのどれもが低いようです。
唯一、どれかを選ぶなら、という感じで「表現欲求」が当てはまるようでした。
選んでないですね。
消去法です。
そうなると当然ですが、エネルギーとしては弱いわけです。
なので、他の人のエネルギーを借りて自分を突き動かすわけですね。
ボクの中身が虚無、虚ろだというのはそういう部分からでした。
器の人。中身の人。
さて、ようやく今回の主題にたどりつきました。
ボクが虚ろであることがわかったのですが、ではそれは悪いことか?という部分が最終的なテーマになりました。
結論としては「悪く無い」し、むしろそういう能力も必要だ、ということです。
特にioのような組織を企業化しようとした場合、COOの方にやりたいこと、エゴ、ビジョンが明確にあったりするとぶつかります。
話し合いも上手く進まないでしょう。
だってやりたいことが違うのですから。
CEOとしては、それならもう、お前はお前でやれよ。と思うのではないでしょうか?
この時、自分を殺して一緒にやろうとしても、近い将来上手くいかなくなるのは当然です。
でも、ボクには自分の軸、つまりは中身がないから、どのような方向性でも受け入れられる。
だから進みたい方法に向けてのベストな提案ができる。
もちろん、CEOの考えるイメージに全面的に共感できているから、という前提はありますが、中身を何にでも入れ替えることができる「器」側の人間だからこそ、ここにストレスがないわけです。
「虚ろ」であることは、実は「器」であることだと気がついた瞬間です。
すごく極端な例だけど、ボクは明日いきなり戦国時代にタイムスリップしてもうまくやっていけるタイプだと思っています。
規模は別としても、たぶんどこぞの武将に召し抱えられ、軍師として活躍すると思います。笑
それくらい、自分の中身はなんでも良いわけです。
そして、一定数そういう「器の人」はいるはずです。
その人数はもしかしたら思ったより多いかも知れないなと想像してます。
逆にいうと、CEOは「中身の人」です。
まず自分のがあり、そこにやりたいことが詰まっている。
その中身は何ものにもかえがたく、情熱と信念とこだわりを持っています。
これはどちらが良い悪いではなく、人間の本質としてどうか、という部分です。
そして、「好きなことでいきていく」と声高に叫ぶひとたちはたぶんみんな「中身の人」です。
でも、全部をひとりでできているかというと、そういうものでもない。
なので、そういう中身の人と、器の人が巡り会い、上手く噛み合うと強いわけです。
中身の人は器の人の中身を補ってくれる。
器の人は中身の人の形のない情熱、信念、こだわりをうまく形におさめてくれる。
自分が何ができるかを知ることはすごく大事です。
それと同じくらい、自分が何ができないかを知るのも大事です。
やりたいことがあるのは素晴らしい。
でも、やりたいことがなくたって情熱は燃やせます。
人のやりがいをサポートすることで、自分もやりがいを感じることはできる。
まずは自分を知り、自分と向き合い、そして自分が相互補完できる人と巡り会う。これがすごく大事です。
人が一人で生きていけないのは結局そういうことなんだろうなと思うわけです。
もし、いま自分の組織が何か上手くいかないと思っている経営者がいるとしたら、ちょっと考えてみると良いかもですね。
周囲に中身の人が溢れすぎていたら、会議をまとめるのは大変でしょう。
それぞれに裁量権を与え、進捗を見守るのも一つの手です。
器の人しかいないなら、あなた一人の中身では満たしきれていないのかも知れません。
数人の中身の人を加えることで、さらなる相乗効果を狙えるはずです。
さぁ、あなたは「中身の人」か「器の人」か。
まずはちょっとゆっくり考えてみるのも良いかも知れませんね。