ボクが得意とする思考術として、AとB、無関係の2つのものに共通項を見つけ出し、それをつなげる、というものがあります。
これは物事の「抽象化」ですね。
抽象化とは、簡単に言うと、物事の大事な部分だけを抜き出して、それ以外は捨ててしまうこと。
ある種、ミニマリズムやエッセンシャル思考につながる部分だとも思っているのですが、これを突き詰めると、本質の掘り下げ作業になるのではないかと思ってます。
ちなみに、ボクのツイッターのプロフィールには「ミニマル思考と独特の着眼点で「?」を「!」にする発想・提案が得意。」と書いているのですが、これは言うなれば「抽象化することで物事の本質を見つけ出し、解決することができる能力」のこと。
で、ふと、この思考実験をしてみようと昨年の暮れにこんな遊びのツイートをしました。
【年末特別お遊び企画】
Andyは「?」を「!」にする発想がどこまでできるのか?
1)脈絡のない、思いつきの2単語をリプ欄に記載ください。
2)その2単語を含めた「クリエイティブ・ディレクション・ビジネス」に関するツイートをその場で生成します。
3)目標累計:年越しまでに108いいね pic.twitter.com/Dra0vYn2qW
— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) December 30, 2019
自分がどこまで物事を抽象化し、説得力ある文章に再構築できるか、を試そうとしたわけです。
タイムラインに流したのは、それを見てて楽しんでもらえるかも、という部分と、自分を追い込むためですね。笑
おかげさまで想像以上のお題が投稿され、自分でも意図しない思考のパターンをみつけることができました。
今回は、実例をもとに、自分自身の思考法を少し紐解いて、言語化してみたいと思います。
経験に基づく発想
これは正直一番発想がしやすいです。
自分の中にデータベースがあるからでしょうね。
その経験を話す中で、伝えたいメッセージを加えればいいので生みの苦しみがありません。
ただ、記憶の中の情報を伝えることになるので、その知識が正しいのかなどの裏付けリサーチは必要になります。
例としては以下のような投稿になります。
けっこう昔の話だけど、動画編集の練習でボクが取り入れたのは「ボカロ」の動画をつくることだった。
無償で何本も請け負ってスキルをあげた。
誰だって下積みの時期はあるよね。
それ以来、ボカロはけっこう好き。
おすすめ?
r-906さんのパノプティコンとか、黒うさPさんの白雪~sirayuki~とか。笑 https://t.co/KGmAGnQ923— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) January 5, 2020
クリエイティブな感性を呼び覚ますには「何もない贅沢」をしてみるのがオススメ。
ボクはロンボク島でその経験をしたけど、もっとオススメなのはミクロネシア連邦の絶海の孤島ジープ。
夜に見える天の川と満天の星空は天下一品。何も無いからこそ、歌や絵など原初のクリエイティブに向き合える。 https://t.co/OTB8sgbbmc
— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) January 4, 2020
このお題の場合は、ミクロネシアを検索するなかでジープ島をみつけ、そこに自分の過去の体験を掘り起こしています。
例え話をベースにした発想
何かを伝えるときに、ボクはよく「例え話」を使います。
その「例」に当てはまる2単語だった場合は、だいたいこの発想法で処理していると思います。
例えば、こちらの例。
最初から何でも上手く出来る人はいない。
誰だって初めての挑戦は難しい。
それはパソコンソフトを使うとか、卵焼きをつくるとか、自動車を運転するとか、シチュエーションは違うかも知れないけど、年齢に関係なくエネルギーが必要。
ただ、最初の壁を超えない限り、それができないままなのは確か。 https://t.co/uWAvBmBW6D— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) January 5, 2020
これは「卵焼き」と「壁」という2単語がお題でした。
まず、「壁」という単語がビジネスやクリエイティブには相性が良いと直感します。
誰しもが壁を乗り越えてきた経験があるはずだという推測ですね。
で、その壁を乗り越えることの重要性を例え話を使って説明しようとするのが次のステップです。
ここで出す例えとしては、「できるだけ簡単なもの」「できるだけ難しいもの」の2つがあります。
今回は「卵焼き」という簡単なものでさえも、最初は壁があるよね。というメッセージに落とし込んでいます。
これで「壁は乗り越えないと、簡単なことですらできるようにはならない」というメッセージを例えを使って届けている形になったのではないかと思います。
以下は同じような例ですね。
みんなすぐに結果を求めすぎだよね。
何でも基礎練を繰り返すことでようやく上達できる。
トロンボーンを吹かずにプロにはなれない。
キックボクシングを練習せずにチャンピオンになれるわけがない。結果を出しているのはいつだって誰よりも努力をしてきた人。
全てをかけて初めてスタートライン。 https://t.co/LHiiWYxirf— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) January 4, 2020
「虹色」は、日本人なら7色と答えるけど、多い国では8色もあり、一番少ない国だと2色だという。
これはその色を表現する言葉があるかないかの差。
つまり、同じものを見聞きしても、その魅力を表現する言語の数は国によって異なる。
自分の概念だけで完結すると、他人に説明できないこともある。 https://t.co/m5vF31TAMU— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) January 5, 2020
自分の力で輝く恒星と、恒星が放つ光を受けながら、その周りを公転する惑星。
クリエイターも同じで、自分から輝く人と、その光を受けて輝く人がいる。
惑星が悪いわけじゃないけど、努力すれば恒星になれる。
そのためには、筋トレみたいに日々努力を積み上げていくしかない。
輝くのには理由がある。 https://t.co/ex37IMQ3Y8— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) January 4, 2020
努力は雪かきに似てる。
やってもやってもキリがないけど、やらないとまた元に戻ってしまう。
プロと呼ばれる人は、これが息をするように出来る。
例えばピアノのプロの方は、アマチュアの誰よりも毎日練習する。3日休むと指が上手く動かないらしい。
これはクリエイター だって同じ。
積み重ねよう。 https://t.co/m9GsLjB3tY— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) December 31, 2019
目指すものがあるなら、そこに到達することではなく、到達した後のことを考えた方が実現度が上がる。
アイドルになりたい。
プロのサッカー選手になりたい。
だと「なる」ことが目標になる。
それだと絵に描いた餅。
アイドルになってどうする?
サッカー選手になってどうする?
もう一歩先を描こう。 https://t.co/0skFERK00G— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) December 31, 2019
この手法で発想しているお題はけっこう多いです。
ある意味王道的な対応かも知れません。
「知らない言葉」としてくくってしまう例
上記が王道なら、こちらは少々邪道でしょうか・・・
140文字という制限があるため、知らない単語や、だれも聞いたことがなさそうな単語の内容を説明している余裕はありません。
そんなときはもはや日本語として認識しないという手段を使っています。
例えばこちらの場合はかなり極端です。
企画を考えるとき、全て思いつきで生み出せるものじゃないから「リサーチ」は必須。
例えば「スーカラ・マッダヴァ」と「喜連瓜破」という全然知らない言葉でも、調べていくとお釈迦様や仏教というキーワードで繋がっていることがわかる。
知らないことはとにかく何でも調べる癖をつけるのがオススメ。 https://t.co/QisLPThryr— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) December 31, 2019
ここで「スーカラ・マッダヴァ」や「喜連瓜破」が何かを説明しはじめたら、140文字は一瞬で使い果たします。
そうなるとメッセージにならない。
そのため、「知らない単語」に出会ったとき、ディレクターやクリエイターならどうするべきか、という行動の方に落とし込むことでメッセージに変換しています。
正直、これはどの単語にも使える禁じ手ですね。笑
なので連発はしないようにしています。
似たような手法としてはこちらもそうですね。
ネーミングで大事なのは
・意図やコンセプトが伝わる
・端的で覚えやすい
・親しみやすい
・音が良い「ポケモンGO」や「カロリーメイト」なんかは本当に秀逸なネーミングだと思う。
逆に「算術論理演算装置」や「バッグクロージャー」みたいな、一瞬で何のことがわからないものは市場流通しにくい。 https://t.co/nARCK4Sn7f— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) December 30, 2019
やはり「算術論理演算装置」や「バッグクロージャー」は説明するには文字数が足りません。
なので、「意味が伝わりにくい単語」として抽象化して処理しているわけです。
伝わりにくい単語が例えになるぶん、主張したい「ポケモンGO」や「カロリーメイト」のネーミングの良さが引き立つ。
こちらはけっこう上手くできた例文ではないかと個人的には思ってます。
こちらも近い発想ですね。
知識には広さと深さの二種類がある。
たぶんみんな、スキーは知ってるし、足利尊氏の名前くらいは聞いたことがあるはず。
でも、スキーの6種競技まで説明出来る人は少ないし、足利尊氏が何をした人か詳しく語れる人も多く無いはず。
知っているのと語れるのでは大きな差がある。
まずは知識に潜ろう。 https://t.co/Tg2B1XzMvf— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) January 4, 2020
名前くらいは知っている、にとどめ、単語の説明は省いています。
そして、その単語の深さや広さを知らないのが普通だよね、というメッセージに置き換えたものですね。
発想を並行移動させる
知らない単語ではなくても、縦位置で繋がりそうにない単語については、横に展開させて、発想法そのものをメッセージとする手法を取り入れました。
例えばこちら
アイディアを膨らませるテクニックとして、「同類」や「対立」などから「属性」を広げていく手がある。
例えば「アトランティス大陸」なら「ムー大陸」「マヤ文明」「遺跡」へと思考が飛べる。
「研ナオコ」なら「清水アキラ」「志村けん」「バカ殿様」へと展開できる。
発想を縦横に育てるイメージ。 https://t.co/vIy9EhzRjd— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) December 31, 2019
アトランティス大陸と研ナオコ、この二つから共通項を見出すのは簡単ではありません。
なので、直接結びつけようとする発想はいったん忘れます。
脈略がないことを逆手に、「連想ゲーム」の最初のお題と設定し、そこから発想を膨らませる手段をメッセージにしている感じですね。
思考を並行移動させているという点では、下記のものも似た属性だと思います。
デザインでフォントにこだわるのは大事。
でも「表記」にもこだわりたい。例えば、2020年2月1日と2020/2/1と令和2年2月1日とで印象は変わる。
トゥモローゲートかTOMORROWGATEかでも変わる。Office io は表記ルールを細かく統一してる。
hanaは小文字、Andyは頭大文字。
イメージの統一は大事。 https://t.co/VsI6JUSVi9— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) January 4, 2020
これは「表記」というくくりの中で、例をスライドさせて提示していますね。
ストーリーの中に組み込む
2単語の親和性が高いもの、関連付けやすいものについては、けっこう素直にストーリーの中に組み込んで表現しています。
お正月の「古き良き日本」のイメージが失われていく。
除夜の鐘は騒音と言われ、正月に家族が集まることも少なくなった。
かつて詫びさびと呼ばれた精神文化も今は希薄かも知れない。
これを無理に取り戻すのではなく、新しい形に昇華させるのがクリエイターの仕事。
無くなるのではなく、進化の途中。 https://t.co/0IqXZcfTFu— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) December 31, 2019
米のシンガーソングライター、ジャニス・イアンは、波乱万丈の人生を送ってきたアーティストの一人だと思ってる。
何度も活動休止を経験した彼女は、きっとその度に原点回帰してきたはず。ボクらクリエイターは常に良い時ばかりじゃ無い。
大事なのは、何度でも立ち上がることだと教えてくれる。 https://t.co/FBlBZ4nay6— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) January 4, 2020
小規模ながら品質の高いギアづくりを行うガレージブランドが人気になったのは、近年の災害多発も無関係では無い気がする。
災害支援のために現地入りするボランティアさんがそのユニークな発想や、こだわりの強いギアを愛用してるとすれば、ニーズは思いがけないところに生まれるという実証にもなる。 https://t.co/RfulJ1CDpn— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) January 5, 2020
下の「無人島」と「AI」というお題については、一見矛盾した真逆の単語ですが、逆に真逆すぎるからこそ繋がった例かも知れません。
必要としている人のところに必要なものを売るのはビジネスの基本。
でも、もう一歩上に行くにはニーズを創り出す必要がある。
・南極で冷蔵庫を売る
・裸足の民族に靴を売る
はこれまでの良い例だった。
これからの時代は「無人島にAIを導入する」くらいの発想戦略が必要。
価値を生み出す時代。 https://t.co/510e4f19sg— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) December 30, 2019
まとめ
細かく分析していくと、もっといろんなパターンが見えてきたり、そのパターンを複数かけあわせているものもありそうですね。
とはいえ、今回の抽象化の思考実験は個人的にはとても面白かったです。
やっぱりボクはひらめいた瞬間が大好きなんだと思いました。
また良きタイミングで開催してみようかな。
ただ、これけっこう集中力を使うので、タイミングは考えたいですけど。笑
そんなわけで、年末年始のお遊び企画、いかがでしたでしょうか?
少なからず、楽しんでいただけたとしたら幸いです。
ではでは、また。
あ、ボクの「抽象化」から本質を掘り下げる思考法がディレクションにどう役立つのかは、ぜひ下記の実務ベースの記事を参考にしてみてください。