COLUMN

ディレクターやデザイナーが写真撮影をする時に必要な最低限の基礎知識

誰でもカメラを持ち、写真が撮れる時代になりました。
なんならカメラでなくても、スマホを使えばそれだけで高画質でステキな写真が撮れてしまいます。

クリエイティブ業界も過渡期です。
大量生産、大量消費が当たり前になり、インスタグラムの台頭などから、すごく安いコストで写真を求めている人も出てきています。

ミニマル撮影、ワンマン撮影も増えていく中で、撮影までデザイナーさん一人で対応したり、ディレクターが自らカメラを持って撮影を行うケースも少なくありません。

予算が低いとクオリティはどうしても犠牲になります。
一方で、デジタルクリエイターとしては、そうしないための努力も必要ですよね。

例えば、プロレベルまでいかなくても、写真技術を知ることで、クリエイティブに意味づけが出来るようになりますし、写真を上手に扱えるデザイナー、ディレクターは、それだけで一つ付加価値が上がるはずです。

そのためには、見積もりの範囲内でありながら、どれだけの価値をその作品に出せるかがカギになってきています。

ミニマムに撮って、価値ある画像を提供する。
今日はそんな、ミニマム撮影ディレクションのお話です。

求められる写真スキルを把握する

まず大前提として、ディレクターやデザイナーが写真も担当する場合、プロカメラマンのような写真を撮る必要はないと考えます。

この基準値をキチンと事前に説明せずに、「撮影も出来ます!」と安易に答えると、実はクライアントの求めるハードルは高かった、みたいな可能性もあるので気をつけましょう。

プロレベルの写真を求めるのであれば、そこはちゃんとそれなりの料金を支払ってもらい、プロカメラマンにお願いするべきです。

自分が撮影可能なスキルを正確に把握し、事前のヒアリングからそれを満たすことができるかどうかもちゃんと判断しましょう。

予算がないから、を理由に安請け合いすると、それはトラブルの元になりかねません。
餅は餅屋。を忘れずに。

「写真とは切り取られた時間」であることを意識する

かつて、ボクが取材をしたことがあるギリシャ人のフォトグラファーさんが言ってた言葉が印象的で、今でも鮮烈に覚えています。

『フォトグラフィーの「フォト」はギリシャ語で「光」。グラフィーは「物語」。だから写真は「光が描く物語」なんです』

写真は、この世界の流れのその一瞬を光を使って切り取ります。
でも、現実にはその前後には物語は続いています。
だからこそ、写真の中に表現できる前後の物語を理解する必要がある、ということです。

写真から受けるメッセージや演出を汲み取り、自分の中で咀嚼することができるか?
たまたま取れた写真でも、ちゃんと後付けで良いから説明出来るか?
この意識の部分、ある意味「コンセプト」の部分の有無が、そのままプロとアマの違いと言えるかもしれません。

例えば、撮影した写真の色を変えるだけで相手の受け取るイメージを変えることが出来ます。

赤く寄せたらエネルギー、情熱、衝動。
青く寄せたらクール、冷静、悲観。

その写真を使って、何をどう見せるのか?

そこを考えながら撮影するのが、撮影ディレクションです。
ただ好きで撮影する趣味カメラとは違う部分ですね。
(もちろん、趣味でもそこまで考えてる人もいますよ)

同時に、写真のもつ力を生かすデザインを意識しながら撮影することも重要です。

例えば、これはボクが「母の日」の広告で作成したビジュアルです。
(撮影はボクではありません)

カーネーションの写真に「母の日」の文字はいらないですよね。
「ありがとう」の一言があれば十分伝わる。
こうしたイメージを持ちながら撮影できると、仕上がる作品の完成度が上がります。
間違っても、奇跡の一枚を期待して撮影に臨むようなことがあってはならないのです。

そして、写真の使い方を間違うとデザインの邪魔をすることもあるというのも知っておいた方が良いですね。

撮影現場について

写真撮影はデジタル化によってワークフローが大きく変わりました。
そのおかげで、以下のメリットが生まれています。

・クライアントがその場確認、即納品が可能
・現像の手間が激減
・失敗のリスクも少ない

特に、フィルム代を考えずに、トライアンドエラーを繰り返せるのはデジタル撮影の魅力です。

撮影後に、なぜ失敗したのか、あるいはなぜ上手くいったのか、そのあたりをちゃんと検証して次に活かせることが大事ですし、デジタルではそれが簡単にできます。
成功体験、失敗体験を繰り返すことで、撮影技術は上がるのです。
それは、プロのカメラマンに限らず、デザイナーでもディレクターでも同じです。

撮影当日のワークフローはこんな感じですね。

1、撮影目的(ビジュアルやコンセプト)を現場共有する
2、撮影対象の準備
3、セッティング(構図、照明、カメラ)
4、完成イメージに合わせて微調整
5、撮影してチェック
6、OKなら納品、NGなら3のセッティングに戻る

撮影前に知っておきたい知識について

本来は撮影をする前に、撮影結果が見えていると言っても過言ではありません。
目的、構図、照明など、カメラを構える前の準備でほぼすべてが決まってしまいます。

カメラのセッティング①:画質

1)解像度(ピクセル寸法)による違い
大きめのサイズで撮影し、あとで圧縮する方が良い

2)JPEGの圧縮率
カメラが持つ一番大きいもの(綺麗なもの)で撮影しておく方が良い

ワークフローの短縮のために小さく撮ることも無くはないですが、それはしっかりとした目的がある場合に限ります。

カメラのセッティング②被写体、ロケーション

1)被写体のクオリティは重要
2)背景のクオリティを意識する(A3の紙1枚ひくだけで良い)
3)背景紙などを用いてホリゾント加工をすることで見せたいものが浮き立つ

ちょっとしたコツと知識で、写真の上がりをワンランク上げることができます。

光の種類を知る

色味がおかしいときはホワイトバランスが適正でない場合が多いです。
ホワイトバランスとは「白いものがちゃんと白く撮れる(肌色などが綺麗になる)」こと。
オートで良いので、きちんとホワイトバランスを取りましょう。

ISO感度について

・感度を上げるほど明るく撮れるけど、粒子が荒くなりノイズが多くなる
・高画質を求める場合は低感度にして撮影する

では、どんな場面でISO感度を上げるのか?
絞りやシャッタースピードではどうにもならないときの最後の手段ですね。

手ぶれとピンボケを防ぐには

・明るく撮ろうとするほどにボケやすくなる
(絞りは開放でピントが狭く、シャッタースピードは遅くなるから)
・ピントはマニュアルであわせるのが一番信頼できる
・オートの場合、コントラストのしっかりしているところでピントをあわせる
・コントラストがないものを撮影する場合は紙に印を書いて、先にフォーカスを決めてしまう

もちろん、カメラ設定の限界もあるので、知っておいた方がよいです。

ライティングの基本を知ろう

・点光源・・・直接光をあてる
・面光源・・・光が柔らかくなり、全体のコントラストもやわらぐ(フィルターなど)

ライトにトレーシングペーパー(ディユーザー)を使うことで光は柔らかくなります。
(太陽直下より曇りの日が綺麗に撮れる・・・雲がディユーザーになる)

また、レフ板を使うことで影を消すことが出来ます。

・サイド光
・逆光(自分の影が入らないなどのメリットがある)

また、男性は影が強い方がカッコよく見えるし、女性は影を消したほうがやわらかく、可愛く見えるので、撮影時から意識するのも大事ですね。

ストロボについて

・好みの写真、適正露出をつくることができます

ライトの配置について

影を出さないことではなく、どう影をつくるかがライティングのポイントです。
モノの質感などを出す場合は特に、「影をどう見せるとイメージに近づくか」を考えましょう。

まずは被写体に対してサイド45度、上45度の位置を最初の基準として、調整を繰り返します。

レンズについて

望遠のほうがモノの形は正確に伝わりますし、ワイドで撮ると歪みが出ます。

構図について

目的によって見せ方を変えましょう。
見せたい情報を明確化する必要があります。
また、モノを動かすだけでなく、自分が動くことでベストの構図を探します。
構図は足でつくるのだと言います。

構図の簡単な作り方

・グリッドを利用する
・3分割法を基準に画角を探る

レイアウト時の構図が与える心理効果

・構図の左を過去、右を未来と捉える感覚が人にはあるそうです。
・右の空間ををポジティブに感じるようです。

例えばこの広告はボクが撮影したものです。

右を大きくあけ、未来へ向かう期待感を表現する構図にしています。

逆にこちらは左を大きく空けてます。

過去(昨日)振り返っている印象を狙った構図になります。

主役と脇役の関係性

主役と脇役の関係性をはっきりさせる(濃淡・遠近)とメリハリある写真になります。

撮影なのか、加工なのか

①加工を前提とした撮影

Photoshopでもどうにもならないことあるということも知っておきましょう。

1)合成を前提とした写真(例:アイドルの集合写真)
ライティングライトによる表情作り(人や背景建物の影とライティングの向き)を統一させる
レンズの焦点距離・画角・被写体との距離を合わせて撮影する(全員真ん中に立って合成するのがベスト)
右に立つならカメラ右で撮影しておく(左に置くとチグハグになります)
絞りを開けすぎると背景がボケるため、切り抜くのが大変になります。

②トリミング

わざと広く撮っておいて、あとから調整するのが基本です。写ってない部分を作ることはできないですからね。

使用サイズと解像度と出力サイズの関係性を把握しておく必要があります。

③書き足し

スタジオ撮影など、背景が単一の場合で、写真サイズのままでは使用サイズに合わない時、背景の書き足しなどを行うこともあります。

④修正

人物なら傷、吹き出物、虫刺されなどはレタッチで消すのが一般的です。
余計なものの写り込みを消す(海で後ろのサーファーなど)こともします。

消し方は以下の通り
└同ポジ撮影(三脚を使う)し、レイヤー二枚を重ねていらないものを消す
└グラケット撮影(暗い側と明るい側を撮影し、良い部分を合成して使う)
└フォーカスグラケット撮影(ピントのグラケット撮影)小さいものなどだと、すべてにピントを合わせた写真ができる(ロゴをぼかさないなどの手法)

シャープにするのも修正のうちです。

色、コントラストの修正もしますがJPEGのものだと修正の限界がある(ちょっと治すくらいのレベル)のも覚えておきましょう。

RAW現像に関して

RAW…無圧縮・劣化の無いオリジナルデータ(情報量がめちゃくちゃ多い)

デメリット
・カメラによってフォーマットが違うため、現像ソフトが無いと閲覧・現像ができない
Photoshopでの現像は可能)
・データ容量が多い
・高感度撮影時の暗い部分の持ち上げが苦手(日々改良中)

メリット
・情報量が多いので細かい修正が可能
└とっさの写真など、設定が間に合わない時もあとから調整できる
└ホワイトバランスを失敗してもあとで調整できる(オートで撮って大丈夫)

最後に

後半は駆け足になりましたが、これがおおよそのスチール撮影に必要な知識といったところでしょうか。

先ほども言いましたが、プロレベルを求めるなら、プロカメラマンにお願いする方が良いです。

どのクオリティで良しとするのか。

ディレクター、デザイナーだからこそ意識したい軸をしっかりと持って、最低限の知識と経験を積むことで、多少の撮影になら対応できるようになる、ということです。

なんども言いますが、餅は餅屋。
いくらディレクター撮影が安いからと言っても、それは人件費の話。
素人がスタジオで長い時間かけて普通の写真を撮るくらいなら、プロに頼んで早く撮ってもらう方がコストははるかに安く、またクオリティも高いです。

ディレクター撮影1万+スタジオ1h5000円×6時間=40000円
カメラマン撮影3万+スタジオ1h5000円×2時間=40000円

ね?

プロに頼む方が良いでしょう?

動画撮影をディレクションするために知っておきたい話はこちらからどうぞ。

動画制作ディレクション入門①~はじめに〜

ABOUT ME
アバター
Andy
we.編集長/Design Offiice io COO./Creative Director|東京⇆京都の2拠点生活。| 企業の経営課題を解決するデザイン・コンサルやクリエイティブ・ディレクションやってます。|ミニマル思考と独特の着眼点で「?」を「!」にする発想・提案が得意。|日本のビジネスにクリエイティブの革命を起こしたい。