ディレクション入門

七夕伝説から読み解くディレクション入門ービジョン設計とタスク管理の重要性ー

今日は七夕ですね。
七夕と言えば、織姫と彦星が年に一回出会うことができる日です。
日本でも「願いが叶う日」として、みんなが短冊に願いを記し、飾ります。

しかし、そもそもなぜ、織姫と彦星は年に一回しか会えなくなってしまったのでしょうか?

今回はその原因と、どうすればそのリスクを回避できたのかをディレクション目線で読み解いてみたいと思います。

七夕伝説の概要

まずは七夕伝説とは何かを確認しておきましょう。

こちらはウェブから引用した簡単なストーリーの抜粋です。

天の神様の娘「織姫」はそれはそれは美しいはたを織っていました。
神様はそんな娘が自慢でしたが、毎日化粧もせず、身なりに気を遣わずに働き続ける様子を不憫に思い、娘に見合う婿を探すことにしました。

すると、ひたすら牛の世話に励む勤勉な若者「彦星」に出会います。
この真面目な若者こそ、娘を幸せにしてくれると思い、その若者を娘の結婚相手に決めました。

そんな二人は毎日仲睦まじく暮らしましたが、これまでとは一転して遊んで暮らすようになります。
仕事を全くしなかったため、天の服は不足し、牛達はやせ細っていきました。

神様が働くように言うも、返事だけでちっとも働こうとしません。

ついに怒った天の神様は、織姫を西に、彦星を東に、天の川で隔てて引き離し、二人はお互いの姿を見ることも出来ないようになりました。

それからも二人は悲しみにくれ、働こうともしなかったため、余計に牛は病気になったり、天の服はボロボロになっていくばかりです。

これに困った天の神様は、毎日真面目に働くなら77日だけは会わせてやると約束をすると、二人はまじめに働くようになりました。

こうして毎年77日の夜にだけ、織姫と彦星は会うことができるようになったのです。

この話、結局のところ自業自得な感じしかしませんが・・・もう少し二人に対する神様のディレクションが上手かったら、結末は変わっていたのかも知れません。

そのポイントをいくつかあげて見ていきます。

ポイント1:ビジョン設計ができていない

まず、一生懸命働いていた若者二人が、結婚した途端に全く働かなくなった。
これは完全にビジョン設計ができてなかったからです。

何しろこれまで楽しいことを知らないままに、働き続けてきたのです。
そこに理想の相手と知り合えば、仕事をそっちのけでラブレボリューションしてしまうのも無理はありません。

部活や受験勉強に一生懸命だったのに、恋人ができた瞬間から何も手につかなくなった経験がある人も少なくないのではないでしょう?

この、ラブレボリューション時に若者を正しく導くために重要なのがビジョン設計です。

部活なら「タッちゃん、南を甲子園に連れてって・・・」
勉強なら「絶対一緒に東京の大学に行こうね!」

これです。

恋愛において極端に視野が狭くなっている若者に対し、その恋愛パワーをうまくビジョンに落とし込んで、進むべき道筋を示してあげる。

これがディレクションです。

なので、神様としては二人を引き合わせ、幸せになる段取りをつけたのなら、そこで二人にとってさらに幸せになるビジョンを提案してあげるべきでした。

例えば、織姫のハタをもっと高価にブランディングして、牛を使って大量に輸送することで今よりもっと大金を稼げるように企画提案する。
そしたら豪邸に住んで、仕事は雇った人に任せて、二人は毎日遊んで暮らせるわけです。
だからそこまで頑張ろう、というように、結婚前にビジョン提示するべきでした。

神様、惜しい。

ポイント2:タスク管理ができていない

ビジョン提案まではできなくても、もう少し二人のタスク管理はしてあげるべきでした。

「神様が働くように言うも、返事だけでちっとも働こうとしません。」

ということですが、それはそうでしょう。
労働意欲がない時に、「働け」という雑な指示ほど響かないものはないからです。

ここで神様がちゃんとディレクションをできたのなら、日々のタスクを設定し、明確なノルマを与えるべきでした。

例えば、一日の労働時間、もしくは成果に準じて、二人で会える時間が確保できる。というような設定をしておけば、いきなり一年間も合わせない!みたいな極端な罰則を発動する必要もなかったはずです。
あるいは週に5日働いて成果が出たら、土日は会えるよ。でも良いわけですし。

なのに、「働け」とだけ命じ、働かなかったら「会わせない」とか言い出し、それでも働かなくて自分たちに被害が出始めたら「じゃあ一日だけ合わせるから働いて・・・」なんて、コロコロ指示を変えているようでは正しいディレクターとは言えません。

人は命令だけでは動かないのです。

ちゃんと日々やることを明確に提示し、タスクに落とし込み、成果を確認する。

まだまだ若い二人なのですから、まずはこれくらいのところから始めても良かったのではないでしょうか?

ポイント3:スタッフィングができていない

そもそも、今回の件は神様が自分で二人を引き合わせておいて、そのせいで二人とも働かなくなったわけです。
これは完全に神様の監督不行き届きです。

そして実案件レベルのプロジェクトでいうなら、ディレクターのスタッフィングミス、ということになります。

どんなに素晴らしいスキルを持ったメンバーでも、そのプロジェクトにおける相性はあります。
一人一人は素晴らしいクリエイターなんだけど、一緒に仕事をしてもらうとパフォーマンスが落ちたり、気持ちよく仕事ができなかったり。

このあたりの相性は、ディレクターとしてはチームメンバーをアサインするタイミングで気にかけておくべきポイントです。

それを「真面目そうだから」という理由だけで二人を引き合わせた神様の判断は少々雑だったと言わざるを得ません。

もう少し二人に恋愛を経験させてみたり、結婚の前に何度か会わせてみたり、そんな配慮は必要だったように感じます。

なんなら、年に一度だけあってみる。というのを結婚させるより前にやっておけば良かったのではないでしょうか?
遠距離恋愛から初めて、会える日を年々増やすでも良かった。

なんにしても、やはり神様のディレクションミスと言わざるを得ません。

まとめ

もちろん、この件は神様だけが悪いとは思いません。
努力を放棄した織姫と彦星、二人ともが反省すべき点はあります。
引き離された後も働かないわけですから、かなり筋金入りの堕落っぷりです。
もはや単なる引きこもりになったわけですからね・・・

とは言え、それをきちんと把握、確認、コントロールするのがディレクターの役目でもあるわけです。
新入社員にいきなり初めから全てを完璧にできるようにしろ、というのも無茶な話だからです。

七夕伝説の神様が、もう少しディレクションを学んでいたら・・・
ボクらの七夕の過ごし方も、もう少し変わっていたのかも知れませんね。

ABOUT ME
Andy
we.編集長/Design Offiice io COO./Creative Director|東京⇆京都の2拠点生活。| 企業の経営課題を解決するデザイン・コンサルやクリエイティブ・ディレクションやってます。|ミニマル思考と独特の着眼点で「?」を「!」にする発想・提案が得意。|日本のビジネスにクリエイティブの革命を起こしたい。