先日、こんなツイートをしたら思った以上にたくさんのいいねの反応をいただきました。
予算とスケジュールとクオリティは、それぞれが三角形の頂点で、互いに綱引きしてる状態。
正三角形になっているのが良いプロジェクト。
一つを無理して引っ張ると、それは二等辺三角形になる。
さらに無理して引っ張ると、どこかが破綻して直線になる。
ディレクションでは、このバランスが大事。— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) September 30, 2019
今回は、このツイッターの140文字投稿では伝えきれていない、もっと細かい部分を説明できたらと思います。
適切な三角関係
まず、ボクが言う予算とスケジュールとクオリティは、それぞれが三角形の頂点で、互いに綱引きしてる状態とはこんなイメージです。
正三角形になっているのが良いプロジェクト。
そして、一つを無理して引っ張ると、それは二等辺三角形になります。
例えば、スケジュールがメチャクチャ短納期になった場合は、スケジュールの頂点が飛び出していく。
これはかなり歪な形なわけです。
この形を適正な三角形に戻すには、予算をあげるか、ある程度のクオリティを我慢するなどして調整する必要がありません。
ちなみに、この場合のクオリティを我慢する、とは、雑で手抜きなクリエイティブが上がってくると言う意味ではありません。
細かい仕上げのチェックをする暇がない。ブラッシュアップをしてる余裕がない。手元にある素材しか使えない。カラーテストしてる場合じゃない。・・・など、いろいろと細かいところでどうしても届かないところが出てくる。
でも、発注側はその裏側のバタバタは知らないで、完成品だけみて判断するから、そうした意識が希薄になります。
「なんだ、短納期でもできるじゃないですかー」の一言に、クリエイター は殺意を覚えます。
気をつけましょう。笑
さて、この頂点をさらに無理して引っ張ると、どこかが破綻して直線になります。
これはもう、制作が機能していない状況です。
ディレクションでは、このバランスが大事。
なので、クオリティを求められるなら、ある程度のスケジュールを確保してもらうか、高額だけど腕に間違いがない、という人をスタッフとしてアサインするかわりに予算をあげてもらう必要があるわけです。
全てを叶えるためには
この考え方でいけば、安く、早く、上手く!を実現するには、正三角形を小さくするしかないわけです。
すごく極端な言い方ですが、デザイン学校の学生さんに、明日までにあげてもらう。ギャラはお昼ご飯おごり!
みたいなことですね。
これなら早い、安い、(表面的には)上手い。を叶えることができます。
ポイントは、「表面的には」の部分です。
どういうことか?
プロとアマ(プロ志望)との差は、言うなれば思考準備の差でもあると思っています。
どれだけ素晴らしいクリエイティブを表現できても、それが本当にビジネスとして役に立つのか、そこまで考えることができる人がどれだけいるか、ということですね。
例えば、安く、早くでお願いするから自由に作っていいよ。と伝えたとして、アマのうちのどれだけの人がターゲットについて深く考察するでしょうか?
競合他社を含めた過去資料を集めるでしょうか?
クライアントに対して丁寧にヒアリングをするでしょうか?
好きなものを綺麗につくる。
表面的な意味で、整えるだけのデザインをする。
ぱっと見いけてるように見せる。
というのはPCと編集ソフトが普及した今、それほど難しくありません。
でも、ちゃんとターゲットを意識し、ゴールを自分の中で設定し、適切なアウトプットを生み出せるのが「プロ」です。
好きなものを好きなように作るのはアマチュア。
(プロを名乗ってなくてもここまでやってる人もいると思います。その人はもうプロを名乗っていい。そして、業界のためにもちゃんとお金をもらいましょう。)
では、そのターゲットとゴールとアウトプットを発注側が適切に指導できるか、が次のポイントです。
いわゆる「ディレクション」と呼ばれる領域です。
当然ですが、ここにもお金はかかる。
だから、プロに依頼すると予算が上がるのです。
(ディレクションを含めてデザインをやっているデザイナーさんも数多くいます。その場合の発注単価が上がるのは当然というわけです。)
大きな正三角形をつくるには、早い、安い、上手い!みたいな即席牛丼みたいなこと言ってたらダメなんですよね。
それぞれを適切な位置に配置して、最大限のパフォーマンスを発揮するようにしたいところです。
ここが分かってる発注者さんは思った以上に少ないので、ぜひ注意してもらいたいなと日々思っていたりするわけです。
で、その思いがあふれて、説明するときの例えに使うようになったのが、この適切な三角形の話です。
最後に
ちなみに、個人的には低予算での小さな三角形の発注を否定しているわけではありません。
物事には予算があります。
それこそ発注側が無理をして、正三角形がくずれるのもまた不本意なはず。
大事なのは、適切な予算とスケジュールで、納得のいくクオリティのアウトプットを生み出すこと。
500円しか持ってないなら牛丼を食べるし、5000円でより良いお肉をたらふく食べたいのなら焼肉屋に行けばよい、ということです。
これを500円しかないのに、焼肉をたべさせろ、とジャイアンみたいなことを言うから三角形が破綻するわけですね。
発注者もクリエイターも、みんなが幸せになれるためにも、この考え方が少しでも広まれば良いなと思います。
もっともっと、業界、界隈をこえて「クリエイティブ・リテラシー」が広まり、向上することを願って。