先日、こんな投稿をしました。
『トモダチだからデザイン安くしてよ』と言う人への模範回答はどれだろう?
①トモダチだからこそちゃんと払ってよ。
②お前の仕事関係の何かは安くなるの?
③デザインするのにも実はお金がかかるんだよ?
④トモダチやめるから正規料金でお願いします。ボクは④。
もちろん、笑いながらね。笑— Andy(クリエイティブ・ディレクター) (@we_creat) December 18, 2019
業界界隈でもよく話題になるこの「オトモダチ価格」。
もちろん、友人のために自分の出来ることをしてあげたい、自分のスキルで役に立ちたい、報酬は感謝だけで大丈夫!
という声だってあると思います。
その想いを否定するつもりはありませんし、快く引き受けているのなら、外野がとやかく言う必要なんかはありません。
一方で、この状況に悩まされたり、ストレスを感じている人も少なくないのが現状です。
では、そもそもこの問題の本質はどこにあるのでしょうか?
今回はその理由を掘り下げていきたいと思います。
スキルに対して唯一の等価交換できるもの
今回のケースで、注目すべきは「トモダチ」だから安くしてよ。という言葉の裏側にあるその依頼者の心の持ちようだと思っています。
例えば、本気で新しいサービスを立ち上げた友人が、すでに借金もてんこ盛りで、広告に一円も書ける余裕がないとします。
それでもせめてツイッターでバナー告知くらい出したいとか、ブログに記事を書くからサムネイルが欲しい。少しでも注目してもらいたい。みたいな状況があるとします。
その場合、この友人がどんなふうにクリエイティブの制作を依頼してくるか、というのがポイントです。
申し訳なさをしっかりと噛み締めながら、情熱をもって、「お前の力が必要だ、助けてくれ。」とお願いしてくるような場合と、すごく軽い感じで、「トモダチだから安くならない?」と言ってくる場合では、受け取る側のモチベーションが変わるのは当然です。
ボクは、クリエイティブと等価交換できるものはお金以外であれば、唯一「情熱」だと思っています。
それも、相手の持っている情熱ではありません。
自分の中に沸き起こるクリエイティブな情熱の方です。
先ほどの例でいくと、前者の場合は「よし、オレに任せろ!」となっても不思議はありません。
それよりも、この告知で集客して、ぜったいに友人の事業を成功させてやろう!と燃えるわけです。
一方で、後者であれば「トモダチだからって理由でなんで安くしなくちゃなんないんだ?」となりそうですよね。
今回の問題の本質はここです。
仕事の受け手(クリエイター側)の感情、モチベーションにいっさい配慮しないままに、「トモダチ」を盾に気軽に金額を値切ってくること。
これがまかり通るために、「オトモダチ価格」に負の感情が発生するのだと思っています。
「クリエイティブの金額はクリエイターが決める」ことはすごく大事だとボクは思うのです。
なぜなら、それが「自分の価値の提示」になるからです。
それがあってはじめて、「普通は5万円もらうけど、お前のためなら1万円でいいよ」みたいなことが言えるのだと思ってます。
他人の値段を他人が決めて良い理由はひとつもありません。
そう言う意味では、Office io がクリスマスキャンペーンとして行った、「言い値でやります企画」は異質に見えるかも知れません。
「他人が値段を決める」をやってんじゃん?と。
ですが、ボクの中でこの考えの根っこは同じなのです。
ioのクリスマスキャンペーンでは、言い値とすることで、「Office ioの価値」がどれほどのものか、みなさんに判断していただこうとしたわけです。
これはもちろん単純に「値段」だけの話ではありません。
どれだけioのクリエイティブを必要としてくださっているか。
言うなればその情熱の部分もかなり重要視しました。
そのため「自由筆記」という枠を設けていましたし、あえて「言い値」でOKとしたわけです。
そうすることによって、情熱的にioのクリエイティブが欲しいと思ってくださった方と繋がることが出来ますし、Office io としても、「この人のためにクリエイティブを担当したい!」と思える方と、繋がれるわけです。
言うなれば、「トモダチ価格」の逆手順のことをやっているんですね。
大事なのは値段が高いことでも低いことでもなく、情熱の等価交換であること。
その考えがあるからこそ、クリエイティブの価値を理解していただける方と一緒にお仕事ができるわけです。
自分のためになる。だけではもったいない
上記のような理由で、ボクは「オトモダチ価格」のすべてを否定しているわけではありません。
あくまで問題視しているのは、需要と供給の関係、モチベーションの等号、そして等価交換としての情熱。という部分が不釣り合いのまま、ストレスを感じながらも仕事として受けてしまうことです。
仮にそれらは満たされてないけど、「他のクライアントさんを紹介してくれるかも」というような、打算部分での等号が成立する場合も当然あると思います。
当たり前ですが、それも否定するつもりはありません。
ただ、業界的にはちょっともったいないな、と思うのもまた事実です。
これも仮説ではありますが、クリエイティブを安く依頼してきた友人は、クリエイターではない可能性の方が高いですよね?
つまりは相場観を知らず、少しでも安くなればいい、くらいの軽い気持ちな依頼なわけです。
これをそのまま受けてしまうと、その友人のなかでは「その値段」が相場感だと刷り込まれるかも知れません。
なので、今度は他のクリエイターさんの見積もりに対して「高すぎる」という話を出したりするわけです。
その人のなかでの情報ソースは過去に安く発注した自分の経験なので、なかなかこの主張は変わらないでしょう。
そうなると、本来は「トモダチ価格」の方が安すぎるのに、価値観の逆転を誘発するわけです。
そして、これがあちこちで起こるとどうなるか?
極端な話ですが、業界の相場全体が下がりかねない。
そこまではいかないとしても、少なくとも、上がるかと言われると難しそうです。
これは恐ろしい事態だと思います。
「オトモダチ価格」にするにしても、値引きをするにしても、「クリエイティブの価値」をちゃんと理解してもらってからやった方がいい。
そしてこの認識は業界、界隈をあげて徹底した方がいいと思うのはそのあたりが理由です。
値引きをすることと、クリエイティブの価値を下げることをイコールにしてはいけないわけですね。
そうではなく、まずはクリエイターではない人たちにもクリエイティブの価値を少しでも理解してもらうようにした方がいい。
あるいは、安いなら安いだけの理由をちゃんと提示すること。
それが単純に自分だけでなく、周囲のクリエイターさんや業界全体のためになることではないかなと思っています。
クリエイティブの価値を発信する
クリエイティブの価値を高め、深め、広める。これはボクが2019年を通して一貫してやってきたテーマです。
そして、当然ですが、一年で終わるわけもなく、下手をすると生涯を通して発信していくテーマであり、自分なりの課題になるのではないかとも感じています。
その中で、やはり一人で出来ることには限界があることも確かです。
このwe.というメディアの中だけで数えるなら、現時点では5万PVくらい。
まだまだ圧倒的に足りないし、なにより界隈を超えたリーチができているとは思えません。もっともっと仲間が必要です。
それは実際に何かしらの活動をするだけでなく、すごくシンプルに、「クリエイティブの価値を高めよう」と意識してもらうだけでも十分です。
その意識があれば、いつの間にかそうした行動や発信をするようになりますから。
自分の周囲5mも当然大事ですが、もう少しだけ広い視野で、業界全体の底上げを考えること。
これを全てのクリエイターが行うことができれば、そのうねりはものすごいものになると思っています。
きっと、2、3年で業界全体が変わるし、界隈の価値そのものが上がるはずなんです。
いまはまだ小さな灯火かも知れませんが、そのうちこの業界を焼き尽くすくらいの業火になればいいなと思ってやみません。
ボクが目指す、究極のクリエイティブ・ディレクションは、きっとこれなんだろうな。
さて、駆け抜けてきた2019年も、いよいよ数えるほど。
2020年はますます研ぎ澄まして加速していくつもりです。
ぜひぜひ、想いの上だけでもご支援、ご協力いただけたら嬉しい限りです。
そして、遠くない未来に、みんなで日本のクリエイティブに革命を起こしましょうっ