ディレクション入門

ディレクション目線で考える、業務進行を円滑にするためのコミュニケーションツールの使い分け

前にツイッターにこんな投稿をしました。

インフルエンサーが電話を否定する流れから、何も考えずに「あれはダメだ」という人も出てきているように感じます。
でも、本当にそれで良いのでしょうか?

LINEやchatwork、Slackは本当に便利だし、メールでのテキストコミュニケーションの無駄を省く、より良いツールだということはよくわかります。
実際にボクもよく使いますから。
でも、電話とはその性格、性質は別物です。

そこを理解せず、深く考えもせずに電話を否定するのはどうかとも思うわけですね。

そして、電話に限らず、ここ数年で世の中に現れた多くのコミュニケーションツールはそれぞれに一長一短があるわけです。
ディレクターとしては、それぞれのプロジェクトに応じて、最適なコミュニケーションツールを選択したものです。

今回はそんな、ディレクター目線から見た、コミュニケーションツールの選び方の話です。

ツールの性格を理解しよう

冒頭でも書きましたが、電話とチャットは全く別のコミュニケーションツールです。
水泳と陸上。
野球とサッカー。
いや、重量挙げと茶道くらい別物だと思った方がいいですね。

だから、チャットツールが便利だからと言って、それがそのまま電話を否定する理由にはならないと思っています。

サッカーが面白いからといって、野球を廃止しようとするのは理屈があわないわけです。
ボクのなかでは、チャットツールと電話はそれくらい存在価値が違うということになります。

もちろん、チャットツールだけで全ての業務を進行できる人もいるでしょう。
でも、それはそうした立場、立ち位置、職業にいる、というだけで、万人に当てはまるかは別問題です。

有名人やインフルエンサーの電話がいらない状況と、われわれが置かれている状況は必ずしも一致しません。
なのに、思考停止のままにそれを盲信するのは危険だと思うわけです。
最適に仕事を進めるためには、最適な仕事道具を選ぶ必要があるからですね。

まずはそのあたりからちゃんと考えてみましょう。

そもそも、チャットがメールの代わりになり得るというのは個人的には納得できます。
なぜなら、どちらもテキストベースのコミュニケーションツールだからです。

メールには出来るけど、チャットにはできない。みたいなことはほとんどないのではないでしょうか?

長文が読みにくい。みたいな指摘はあるかも知れませんが、それなら長文を別ファイルにして送れば良いわけです。
本質的にメールよりもチャットが劣る理由にはならないですね。
むしろ、反応速度や利便性、簡易性に勝るという意味で、チャットツールの方が優位だと思います。

なので、ボクも積極的にメールをやめてチャットツールの利用をするようにしています。
区分として、ざっくり言えばこんな感じに仕分けて利用しています。

LINE・・・基本プライベートのやりとり。タイムラインが流れやすく、データのやりとりにも向かないので、大事な情報のやりとりはしない。

Chatwork・・・2〜5名程度の少人数で行うシングルのクリエイティブ進行に関する連絡。スピード感やタスクを優先的に消費していくために使う。逆に大人数で業種や業務をまたぐ、複雑なやりとりには利用しない。

Slack・・・大人数の長期的なプロジェクト、あるいは複数の業種、業務、部署をまたぐ複雑なクリエイティブディレクションに利用する。
議題に応じて話をする部屋を切り分けられるので、情報が混乱しにくい。

Trello・・・プロジェクトの進捗管理。基本的にはタスクや進行をみるために使い、コミュニケーションは別で行う。

特にchatworkとSlackはプロジェクトの参加人数に応じて使い分けた方がいいと思っています。

chatworkとSlackの使い分け

例えばchatworkだと、案件が進行していくなかで、新しいメンバーを迎えると、その人は内容を確認するために全てのタイムラインを遡る必要がでてきます。
これはかなりのタイムロスだし、本人にとってもストレスだと思うのです。

さらに、こちらはすでにデザインの打ち合わせをチャットベースで始めているにも関わらず、あとから参加した人が「はじめまして、よろしくお願いします」みたいなテキストを投げ込んで、それに対してみんなが「はじめまして、よろしく」などと答え始めるともうカオスですよね。
大事なやりとりがどんどん上に流れていくわけです。

だから、複数人が参加して、いろんな情報が飛び交うプロジェクトはSlackにするようにしています。

これなら最初からトークのカテゴリーがチャンネルに分かれているから、新規参入の人は自分に関わるところだけチャンネルを追えばいい。
初めましての挨拶も、自己紹介のチャンネルに書き込めば、やりとりを遮ることもないし、カオス感は減るわけです。

では、chatworkではなく、Slackだけでやれば良いのでは?と思うかも知れませんが、Slackは準備と管理が少々面倒という難点があります。
チャンネルを立ち上げたり、スレッドを確認したりとなると、少人数のやりとりでは不要なコミュニケーションコストが発生してしまう。

だからこそ、chatworkとSlackの使い分けはちゃんと考えるべきです。

このプロジェクトに最適なコミュニケーションツールは何か?
ディレクターとして、常に意識しておきたい部分だと思っています。

チャットと電話

さて、ボクの業務も基本チャットベースです。
テキストコミュニケーションで完了できることはどんどんテキストで終わらせていきます。
一方で、どうしても電話確認しておきたい。と思う状況も発生します。

それは「感覚的」な話をする必要がある場合です。

例えば、デザインの方向性やニュアンスを伝える場合などがそうですね。
動画でも、書いたコンテについて、メモとは別で状況や背景、情熱やイメージなどのテキストにできない情報を伝える必要がある場合はやはり電話です。
(あるいは直接会ってミーティングすることもあります)

同じ「かわいい」という表現であっても、テキストから得る印象と、言葉として脳で聞く印象はかなり異なります。

強引に線引きをするなら、左脳的な要素の連携はテキストベース。右脳的な感覚の連携は通話ベース。と言ったところでしょうか。

これは別に何かの実験データを知っていて言ってることではないので、本当に感覚的なことでしかないのですが、間違いなく同じ言葉でもテキストと音声だとそこに乗る情報量は異なると思っています。

そういう意味では、テキストは受け手側の解釈領域が大きく、音声は発信側の感性領域が大きいのかも知れません。

そしてもう一つ。
音声通話を苦手とする人がいるのと同じで、世の中にはテキストコミュニケーションが苦手な人もいるということを覚えておきたいですね。

文字から情報を読み取るのが苦手だったり、逆に書いてもいない情報を読み取ってしまったりする人です。
これは何も能力が高いとか低いとか、そういう話ではありません。
「何が得意か」という違いでしかないのです。

これは単純に、左手より右手の方が使いやすい。という感覚の差と同じだと思ってます。
「テキストを読むより、聞く方が楽。」なのか、「話を聞くよりテキストを読んだ方が楽。」なのか。
その得意の差異ですね。

ちょっと例えとしてはズレるかも知れませんが、ボクなんかは「テキストが読めすぎる」タイプです。
なので、文字が抜けてるテキストでも脳内補正がはたらきすぎて苦もなく読めてしまう。
そうなると文字校をするときなんかは本当にひどいことになります。
読めてしまうから、ミスに全く気が使いないのです。
前後の文脈からの補完力も高いので、その人が実際に書いてないことまで読み解いたりもします。
これはけっこう客観的な分析から考えると欠点にもなるんですよね。

こうした自分の特徴は、自分でも意識して理解しておいた方が良いと思います。
プロジェクトの初期の段階でこの会話をしておくだけでも、コミュニケーションミスは減るでしょう。

電話もひとつのアポと考える

さて、テキストと通話についての使い分けが見えてきたところで、もう一つ解決しておくべき課題があります。
それは、電話が嫌われる理由の一つである、「他人の時間を奪う。」というものです。
これはかなり賛成です。

集中しているときに電話が鳴ると、出る・出ないに関わらず、やっぱり集中力は途切れます。
また、相手からかかってきた電話の場合は、いつ終わるのかわからないというのもストレスの一因かも知れません。
このあたりは通話をうまく使う以上、解決しておくべきでしょう。

まず、ボクは電話する時は必ず相手に事前調整をかけるようにしています。

「このあと電話可能な時間をお知らせください」とか、○月○日の○時にお電話可能でしょうか?」みたいな感じですね。
打ち合わせや会議と同じ扱いにして、事前にアポどりをするのです。
だからボクのグーグルカレンダーには「●●さんと電話打ち合わせ」というスケジュールが記載されています。
時間も最低30分確保しています。
そうすることで、電話が思ったより長くなって、時間を奪われた、という感覚がなくなるからです。

ちなみに、電話のあとは30分、その電話に対して発生した何かしらのタスクを処理する時間にあてています。
なので、ボクのスケジュールは電話対応込みで1時間、常にブロックされた状態なのです。
これにより、電話が10分で終わったら、そのタスク対応を残りの50分で行うなどの時間調整幅が作れます。
もし、電話10分、そのあとのタスクが20分でおわるなら、残った30分は休憩にしてもいいし、細かいすぐ終わる別のタスクに充ててもいい。

電話を起点として、その一時間を全てスケジュールに落とし込むことはかなり通話ストレスを軽減してくれています。
良かったら試してみてください。

そして、ボクは基本的にはアポ無しの電話にはほとんど出ません。
必ず着信を確認したあとでスケジュールを調整してから折り返します。
唯一の例外として、外を歩いているときや、待ち合わせのときくらいですね。

また、これをやっていると、相手も同じように事前に通話可能か聞いてくれるようになるというのもメリットです。

コミュニケーションツールはいろいろありますし、その使い方も様々。
当然道具なので一長一短でもあります。

大事なのはコンタクトを取り合うメンバーとの連携のしやすさ。
そこを無視して、インフルエンサーが「電話するやつはバカ」とかいうのを真に受けて、思考停止のまま電話を使わないのは単なる思考停止です。

ちゃんと、自分の考えの中で、配慮をもって、仕事を円滑に進めるために必要なツールを選びたいものですね。

では、今日はこのへんで。

ABOUT ME
Andy
we.編集長/Design Offiice io COO./Creative Director|東京⇆京都の2拠点生活。| 企業の経営課題を解決するデザイン・コンサルやクリエイティブ・ディレクションやってます。|ミニマル思考と独特の着眼点で「?」を「!」にする発想・提案が得意。|日本のビジネスにクリエイティブの革命を起こしたい。