ディレクターを名乗る以上、誰にだって「初めて」任された仕事ってのはあるはずですよね。
その仕事の大きい、小さいに関わらず、ボクはそれを「プロジェクト」と呼びます。
今までやったことがない、新しいビジネスへの挑戦は、全て「プロジェクト」だと思っているからです。
そして、初めてのプロジェクトを任された時、「プレッシャーだ」と感じるか「成長のチャンスだ」と感じるか。
この感じ方一つでプロジェクト成功の確率は大きく変わると思ってます。
プレッシャーだと捉える人は、自分のことで頭がいっぱいで、周りに頼ることを忘れてる可能性が高く、チャンスと捉える人は積極的にプロジェクトを動かそうと努力する可能性が高いからですね。
初めてのプロジェクトでは、知らないこと、経験したことがないことの方が多いのは当たり前です。
だからなんでも一人でうまくやろうと考えると失敗するか、なんとか上手く行っても途中の困難が多いはず。
だからこそ、上司や先輩をどんどん頼って、経験値を積むことをちゃんと意識するのが大事だと思ってます。
もちろん、自分で出来ることは120%でやることは忘れずに。
これが出来る人は伸びるんですよね。
さて、今回はそんな「初めてのプロジェクト」をどうディレクションすれば上手く進行できるのか、そのあたりを掘り下げていきましょう。
プロジェクトの構造
初めて任されたプロジェクトを「ビジネス」と捉えると、大きすぎる割りに正体が不明で、もしかしたら足がすくむかもしれません。
プロジェクトは大きなプロジェクトのままにしておくと何から手をつけていいかわからなくなって混乱します。
まずはプロジェクト全体をどんどん小さなタスクに分解していくことが大事なのです。
例えば、ウェブサイトを作るのなら、サイトマップやワイヤーフレームを作って共有するのはそのためですよね。
大きな山を見てるだけでは動けないのです。
だからこそ、まずはプロジェクトの構造分解から考えてみましょう。
実際はプロジェクトは4段階に区分できます。
①企画
②準備
③進行
④解決(完了)
この4つステップをキチンとフォローしていくわけです。
で、この構造って、旅行の計画を立てたり、友人のサプライズパーティをやるのとベースは同じなんですよね。
思いついて、周囲を巻き込み、役割分担して、結果を出す。
実は、けっこういろんなシーンですでに自分たちはプロジェクト進行を経験したことがあるわけです。
ただ、それがビジネスベースではなかったというだけ。
やっていくことは同じです。
「プロジェクト」を一括りに大きく捉えると、いろんなことをたくさんやらなくちゃいけない気がして目眩がするかもしれません。
でも、フェーズに分けて考えたら一度にやることなんかそんなに多くないんですね。
①企画
②準備
③進行
④解決(完了)
の4段階のフェーズで、それぞれやるべきことを整理していくのがポイントです。
①企画
どんなプロジェクトにも企画があります。
というか、企画がないプロジェクトなんて存在しないんですよね。
で、企画があるということは、解決すべき課題があるということです。
課題があるからこそ、それを解決した時に成果が得られるわけです。
なので、まずはこのスタート(企画)とゴール(解決/完了)をシンプルに見渡してみることが大事です。
道を探るところから始めます。
時として、スタート(企画)とゴール(解決/完了)に直接結びついていなかったりする場合もあります。
ここをちゃんと明確にしないうちから企画を動かしても、絶対にゴールにはたどり着けないですよね。
まずは手持ちの地図が正しいのかの確認が大事になります。
正しい地図がないのに、ゴールへ走り出すのは単なる無謀ですから。
②準備
しっかりとした企画を設計できたら、次に大事なのが「準備」です。
これは段取りとも言いますね。
どうすれば正しいゴールにたどり着けるか、その道順をしっかりと設計するわけです。
ルートAを確保したら、万が一のルートBを意識することも大事。
踏破に必要な仲間を集め、足りない情報を集め、装備を充実させていきます。
どれだけ企画がしっかり出来ていても、それを実行するための準備が不完全だとプロジェクトは上手くいかないでしょう。
必要な人材は?
人数は足りてるか?
ちゃんと情報を集めたか?
足りない情報はないか?
装備(スペック)は十分か?
不測の事態に対応できる余裕はあるか?
このあたりの総点検はしっかり行いましょう。
初めてのプロジェクトの場合は、この辺りの判断がまだ難しいかも知れません。
何しろ経験値はないわけですから。
だからこそ、こうした部分で上司や先輩を頼るわけですね。
自分では足りないスキルや経験値を補ってくれる人がいるのはとても心強いはず。
自分で考えても結論の出ないこと(経験に則った判断)は、どんどん相談していきましょう。
ただし、最後の決断を下すのは自分(ディレクター)であることは忘れずに。
頼るのと、人任せにするのは似てるようで全然違います。
③進行
しっかりとした企画が設計でき、仲間や装備を含めた準備が完了したら、プロジェクトはいよいよ「実行」のフェーズです。
とにかく最初に描いた地図をベースに出来ることから進めていく。
もちろん、途中で上手くいかないことだって出てくるわけです。
それをどう解決するか、もプロジェクトの醍醐味の一つだと思えると強いですね。
まず、プロジェクト進行中に何か問題が起きた時、いきなり一人で解決しようと思わない方が良いです。
それよりも迅速にチームメンバーに情報共有して、みんなで対策を練る必要があります。
この情報共有が出来てないと、実は大したトラブルでもなかったことを大げさに扱ってしまうことがあるわけです。
むしろその逆が怖いけど…
プロジェクト進行中のトラブルは、出来るだけ小さいうちに潰しておくのが定跡です。
これくらいいいか・・・と見逃したことほど、後から大きく成長して帰ってきます。
トラブルに対処する時のポイントは、「丁寧に、冷静に。」
ぶっちゃけ、慌てても何もいいことはないし、起きたことはなかったことにはならないですから。
心に余裕を持って対応しましょう。
④解決(完了)
さて、無事にゴール(解決/完了)にたどり着けたとします。
いやー、よかった、みんなで打ち上げして終わりだ・・・ってのは少し早いですね。笑
プロジェクトは、完了したら終わりじゃないんです。
そこで一度、何が上手くいって、何が上手くいかなかったかを冷静に分析したいところ。
特に上手くいかなかったところは徹底的に反省する必要があります。
もっとこうすればよかった、あの手があった、を書き出して整理することが大事。
この経験値が、次に繋がる財産になるわけです。
もちろん、メンバーの皆さんとの乾杯もその情報共有を兼ねて開催する方がより有意義になる、というわけです。
不確定要素に備える
さて、ここからは進行に関わる部分での、上手くいかない時について、より詳しくみていきましょう。
プロジェクト進行が難しいのは「はじめてのこと」がたくさんあるからです。
人は一度経験したことをもう一度やるときは比較的上手く、またストレス少なく対応できるものですから。
でも、基本的に、どんなプロジェクトだって「初めての要素」は必ず含まれます。
これは新人も、ベテランも同じですね。
仮に毎年開催している会社行事だとしても、100%去年のまま、ということはあり得ないはずです。
それが、経験を積むことで「はじめてのことが多少なりとも少なくなる」だけで、「不確定の要素」を取りまとめてゴールに導くという意味ではベテランも新米もあまり関係ないと思ってます。
この「不確定の要素」の多さがプロジェクトを難しくする要因になってるわけです。
プロジェクト進行中の「不確定の要素」を出来るだけ小さくするには、出来ることは限られます。
①消す
②削る
③備える
この3つですね。
事前確認などで「消す」ことができたらベスト。
それが無理なら2択、3択のように要素を「削り」にいく。
それでもダメなら「備える」。
何が起きても対応できる想定を繰り返すというわけです。
とにかく、事前事前に手を打つことが大事です。
プロジェクトを進行する前から、全ての課題やリスクが見えていたら苦労はないんです。
一つ一つ潰していくだけですから。
でも、なかなか全部は見えない。
だからこそ、課題やリスクを見つけた瞬間にメモることが大事です。
あれ?という違和感を感じた時も同じで、その違和感を放置せず、文字にして客観視するのがオススメですね。
自分では対応ができない内容については、それが得意な人、出来る人にどんどんお願いするようにするのもポイントです。
一人で抱え込むのが一番危険なんです。
そのためには自分の力量を知ることがかなり重要になります。
出来る気でいる人ほど、後から苦労するのはこれですね。
自分の実力は、常に7かけくらいで考えておいて損はないと思ってます。
プロジェクトが上手くいかない原因
さて、不確定要素以外にも、プロジェクトを困難にする理由はいくつかあります。
その辺りも簡単に見ていきましょう。
誰のためのプロジェクトか?問題
まず、プロジェクトが難しくなる理由の一つに、「誰のためのプロジェクトか?」問題があります。
上司のため、会社のため、クライアントのため、というミクロな視点で頑張ってると、大事なことを見逃すことになるわけです。
最終的にそのプロジェクトは誰のためのものなのか。
本来はユーザーや消費者のためにあることがほとんどだと思います。
迷ったら、企画に戻るようにしましょう。
思い込みが生む悲劇問題
次に、ボクはプロジェクトにおけるトラブルの9割は「思い込み」によって発生すると思ってます。
「やってくれるだろう」「間に合うだろう」「こんな感じの気がする」。
これを引き起こさないためには最適な情報共有とチーム内コミュニケーションが重要です。
言った言わないとか、もはや不毛の極みでしかないからね・・・
プロジェクトを進行する人にとって、情報の取り扱いはすごく大事になります。
新鮮さを保ちつつ、最適なタイミングで、最適な人に渡す必要があるわけです。
スケジュールコントロール問題
お母さんに「勉強しなさい!」と言われて、「今やろうと思ったのに!」と答えた経験は誰しも一度くらいはあるのではないでしょうか?
これ、実は仕事においても発生していたりします。
上司や先輩にあれこれ指示を受けた時、「もっと後で言ってよ。」とか、「今言われても。」って思った経験ないですか?
これ、過剰になると抜け漏れの原因になるからとても危険です。
情報をキープする、リリースする。というタイミングコントロールも一つのディレクションだと考えます。
これはスケジューリングにも直結する問題ですね。
スケジュールはどれだけ完璧にシュミレートしたとしも、やっぱり遅れる可能性が高いものです。
だから、それを踏まえて1.5掛けで計算しつつ、2割前倒しの進行を意識したりします。
それでも完璧に進むことなんて少ないんですよね。
最後に帳尻を合わすために、細かな調子が都度必要です。
放置してたらそりゃ事故るのは当然です。
また、スケジュールでバッファ(余裕)をとっておくのは大事ですが、それを進行スケジュールの中に入れてしまったら元も子もないですね。
あくまでバッファはバッファとして確保しておく必要があるわけです。
何しろ、みんな与えられた時間のギリギリまで仕事してしまいますから。
これは予算も同じ考え方で、個別に管理する必要があります。
「予算・品質・納期」の三角関係
最後に、これは以前の記事でも詳しく書いた内容ですが、プロジェクトを進行する中で、適切に把握しておきたいのは「予算・品質・納期」の三角関係です。
これが綺麗な正三角形を描くように調整していくのはとても大事なんですね。
詳しくはボクの記事「発注者もクリエイターも知っておくべき、予算とスケジュールとクオリティの適切な三角関係。」に書いてますので、よかったら参考までに。
「予算・品質・納期」の全てを優先させることは、どんなに優秀なディレクターでもできません。(この場合の予算は「低予算」の方です)
それをすると言うことは、どこかに必ず負荷がかかっている状態だからです。
納期を縮めて品質も保つなら、予算を上あげる。
予算をそのままに納期を縮めるなら、品質としてどこかカットする。
みたいなバランスですね。
こうならないように事前にコントロールするか、あるいは予算そのものを増やす交渉をするか、判断はそれぞれです。
どれだけ素晴らしいクオリティで、納期も完璧に仕上げたとしても、当初の予算の3倍もかかってたとしたら、そのプロジェクトは成功と呼べるでしょうか?
もちろん、会社やクライアント的にOKのこともあると思います。
一概には言えないかも知れません。
だからこそ、思い込みで判断せず、全てを明確にしていく必要があります。
先手を打つ必要があるわけです。
最後に、担当プロジェクトを「自分の仕事」と思ってる人はプレッシャーもすごいし、多分あまり上手くいかないと思います。
ここはマインドセットですね。
プロジェクトはあくまで「チームの仕事」。
自分はたまたまその進行役になったに過ぎないのです。
チーム全員の能力を引き出して初めてチームは機能するし、成功への確率が上がります。
まずは仲間を信じ、そして「自分の役割」を全うすることをしっかり考えましょう。
それでは、また。
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