Twitterのタイムラインでよく見かけるクリエイターさんとお茶やご飯に行って、その方のクリエイティブに関する考えや想い、設計や戦略を勉強させていただこうというこの企画。
新時代のクリエイター 能力3種の神器である「マネタイズ(営業術)」「セルフプロデュース(自己発信術)」「オリジナルスキル(自分の武器)」について、いろいろと話を伺います。
今回のインタビューゲストは、企業のCI/VI、店舗や商品のロゴ・ブランディングを専門に手がけていらっしゃる、COSYDESIGN Inc.の代表でデザイナーのさとうコージィさん( @cosydesign)です。
そこには圧倒的な学びの要素がありました。
よろしければ、ゆっくり読んでいただけたら嬉しいです。
COSYDESIGN Inc.代表のさとうコージィさん
コージィさんとのつながりもツイッターからでした。
確かツイートに対してのリプライでやりとりを開始し、お会いする約束まではけっこうスピーディだったように記憶してます。
コージィさんのツイッターはそれより前から何度も拝見していました。
最初に感銘を受けたのは、コーヒーの染み(滲み)をそのままロゴに使用するという斬新ながらも暖かさを感じるその発想とデザインからだったと記憶してます。
それ以外にも、ロゴの細部を拡大したり、カリグラフィーのリアル動画をアップしたりと、そのスキルの幅と深さに何度も感嘆していました。
ぜひぜひお会いしてお話を伺いたい!という想いがあり、なる早で1月の調整をしていたのですが、年明けからのボクの忙しさが想定外で、何度も日時を延期していただく事態に。
正直、自分自身がスケジュールをディレクションできなさすぎて、本当に申し訳なさを抱えてました。
なんだかんだでお会い出来たのは2月も半分近く終わる頃。
ですが、そんなボクを非常に暖かく受け入れ、非常にためになる、学びの多いお話をしてくださいました。
本当に感謝しかありません。
今回はそんなコージィさんの「クリエイティブの流儀」を探っていきます。
コージィ流マネタイズ(営業術)
コージィさんの営業術は本当に基本的で、主にウェブサイトからの集客が新規参入の窓口とのことでした。
大阪のなかでいくつかのデザインワードを掛け合わせた時の上位に表示されるということで、そこからの問い合わせが多いそうです。
これ、簡単そうに言ってますが、その位置まで行くのは簡単なことではありません。
これまでに積み上げてきたものがあるからこそ、そのキーワードで検索され、上位表示されるわけです。
だからこそ強い。とも感じましたし、むしろ、それを支える考え方の方が重要だな、と思いました。
お話を伺っていく中で、ボクの心に一番深くささったのはコージィさんがデザインをするときの「とにかく質にこだわった」という言葉です。
質が質を呼ぶから、クオリティについてはいっさいの妥協をせず、徹底的にこだわりぬいてきたそうです。
(もちろん、いまも)
以下、要約ではありますが、コージィさんの言葉を掲載します。
質を求める人は、クライアントサイドでも妥協はしない。
だからこそ、より良いデザイン、より良いロゴを求めて検索し続けている。
150社以上のサイトを探した人が辿り着いたこともある。
そういう企業さんと出会えることで、自分の仕事の質をより高めることができる。
この言葉にはものすごく痺れました。
ともするとウェブサイトは単なる営業ツールで、いかに検索されるかという数字の部分だけを追いがちです。
いや、実際にボクもそうでした。
でも、コージィさんは、検索される数よりも、まずは自分が発信するコンテンツの質にこだわり続けてきたのです。
だから、必然的に検索順位が上がっていった。
(もちろん、それ以外にもいろんな努力はしている前提で)
これだけのコンテンツ主義があるからこそ、誰もが利用するウェブサイトという営業ツールのなかで、ゆるぎない営業方法を確立できるのだな、と感銘を受けたのです。
ウェブサイトをつくることはそんなに難しくありません。
デザインができる人なら、自分でデザインをすればいいし、コーディングだって安価でうけてくれる人はいるでしょう。
Wixみたいなコーディング不要のサイトを利用することだってできる時代です。
でも、だからこそ、中身にこだわる。
これ以上、基本であり、かつ究極の営業法はないのかも知れません。
もちろん、良い仕事、良いクリエイティブを生み出すことができれば、そこから紹介などで次の仕事が入ってくるわけです。
まさに仕事が仕事を呼ぶ状態ですね。
クオリティに勝る営業なし。
そんな言葉を胸に刻みつけました。
コージィ流セルフプロデュース(自己発信術)
コージィさんがTwitterをはじめたのは2010年。
ですが当時は登録だけで、本格的に運用をはじめたのはここ半年くらいだそうです。
それだけであのフォロワー数ですから、オンラインでの影響力の高さが伺えます。
ですが、お話をお聞きする限り、コージィさんのセルフプロデュースの本質はTwitterでの発信ではありませんでした。
それよりももっと広く、もっと深く、徹底した戦略と戦術でここまで組み上げてこられたのだと知ることができました。
例えば、まだSNSが普及していない頃から、すでに3つのブログと業界のイントラネット、さらにポータルサイトなど、合計9つもメディアで自分の作品記事の発信を続けていたそうです。
さらに「デザイン年鑑」にも作品を出し続けました。
最初の1、2年こそはなかなか掲載されなかったそうですが、その後は次第に掲載される回数が増え、それを基盤に業界認知度があがっていったそうです。
また、デザイン年鑑を見た出版社から作品使用の問い合わせがくるなど、その認知領域も少しずつ変化し、広がってきました。
また、それをきっかけに同じような熱量の人と出会うことができたり、作品をとおしてお互いを知ったり、離れた地域、場所の人であっても刺激になったりといろんなメリットがあったそうです。
露出がふえることはそのまま業界知名度があがること。
遠く離れた同じ熱量の仲間と出会えること。
これは実は当時もSNSが普及した今も変わらない真理なのかも知れません。
ただし、今の時代の方が出しやすくなっている反面、多くの情報の中に埋もれがちにもなります。
だからこそ本質が大事、本物が大事だということですね。
最初の「徹底的にクオリティにこだわる」に通じる部分ではないかと思います。
意識して発信することの大切さが伺い知れます。
また、これは余談ですが、「デザイン年鑑」に作品を出すことは、認知拡大以外にもう一つの目的があったそうです。
それが「自分のデザインクオリティを知ること」だったそうです。
基本的にクライアントさんはデザイン業界の人ではないことの方がほとんどです。
なので、良いデザインを提供すれば、もちろんよろこんでもらえるけど、本当にそれでいいのか?を自らに問いづけたと言います。
もちろん、当時の自分では100%以上の仕事をして、最高のデザインを提供してます。
でも、デザイナーでない人からはわからない伸び代やアイディアがもっとあるのではないか?
さらに自分のデザインスキルを伸ばすためには、プロからの評価が必要ではないか?
もっと良くなる要素はないか?
そんな考えが常にコージィさんの意識にあったそうです。
そのため、デザインとしての質をプロに判断してもらうため「デザイン年鑑」に作品を出すことで客観評価を意識するようにしていたのです。
自分の目を肥やし、常に最高のクリエイティブクオリティを求めたコージィさんだからこその考え方ですね。
コージィ流オリジナルスキル(自分の武器)
コージィさんは新卒からデザイン会社で6年ほど働いたのちに独立してデザインオフィスを立ち上げられたそうです。
独立当初からバリバリと仕事をされていましたが、実は一つの悩みがありました。
それが、「確かに仕事は忙しいけど、これでは過去の自分の経験を絞り出してるだけだ」というもの。
実は、当時のコージィさんは、言うなれば「器用貧乏」で、お願いされた仕事はとにかくなんでも受けていたそうです。
それだけでなく、営業での売り込みの言葉といえば「なんでもできます」。
当然、高いレベルでなんでもこなせるからこそ言えるセリフでもあるのですが、一方でそれは営業上の武器にならないという事実も肌で感じていたようです。
なぜなら「これをあの人に頼もう」とはならないからです。
転機になったのは、奥さんの「もっとヤルことを尖らせたら?」という一言だったそうです。
そこからいろんなことに挑戦しながら、自分の「武器」を探っていきます。
例えば、素材を渡されて組み上げるレイアウトデザインは自分のやりたい分野ではない。
ポスターのコンペにも挑戦してみたが、そういうタイプでもない。
これまでにやったことがないデザインへの挑戦、背伸び…試行錯誤の時期が続きます。
そんなかな、ついに一つの強みを探し当てることになります。
きっかけは酒造メーカーさんのラベルデザインからでした。
ロゴをデザインできるのは一人しかいない。
作ったロゴは愛され、長く使ってもらえる。
そうした想いから、ラベルのデザインがもともと好きだったのもありますが、何よりロゴデザインをやりたいと思えるようになったそうです。
そして、そこからはロゴデザインを全面に押し出した展開を常に意識するようにしていったそうです。
営業で初対面の方にはしっかりとロゴデザインが出来ることを押すようにし、自分のサイトでも意図的にロゴに強いイメージを打ち出しました。
また、コンペ案件から相談がきたときも喜んで挑戦し、さらにそのコンペを取ることで、ロゴデザインといえばコージィさん、のように指名されるようになっていったそうです。
間口を広げるのではなく、絞ることで自分の得意分野を確立し、指名でデザインの相談がくるように設計する。
これはシンプルだけどゆるぎない、クリエイターの営業方法の本質であるように感じます。
編集後記
コージィさんはこれまで常に挑戦してきました。
自分の実力を試し、質をあげることに貪欲であり続けました。
そのスタンスは今も変わってはいません。
その一方で、最近では次の年代のクリエイターのことを考えるゆとりも生まれてきているようです。
コージィさんは、デザイン制作で忙しい時間をしっかりコントロールして、大学でも週に2回の講義を行っています。
そこで意識されているのは、やはり若い世代へとバトンをしっかり渡すこと。
デザインを知らない層にまで、その価値を確かに伝えようとする想いです。
自分自身のことをディレクタータイプではなく、あくまで手を動かし続ける職人タイプだと分析するコージィさんだからこそ、そのスキルと知見は若い世代にとっての掛け替えのない財産になるはずです。
一方で、コージィさん自身もいまのままで満足するつもりもないようです。
過去の人とは思われたくない。という言葉がとても印象的だったのですが、やはり次にやることを常に模索している姿勢がプロフェッショナルだと感じました。
例えば、あえてコラボ仕事をしたり、違うクリエイターとの掛け算を通じて、新しい世界を見に行くような構想もあるようです。
質の高いデザインを極め、ロゴデザインを極めていく。
そんな褪せない情熱が、コージィさんをさらに進化させていくのだなと話をうかがいながら痛感しました。
最後にもうひとつだけ、印象に残ったコージィさんの言葉を紹介します。
やはりデザインも人がつくるものなので、その人の滲み出るものがある。
だから、それを求める人とどうマッチするかが大事。
単なる「デザイン」の提供ではなく、その人を見て、その人に届けようとする質の高い思いが溢れた言葉だと思います。
コージィさん、今回はインタビューありがとうございました。
ボクもまだまだこれから。
すこしでもクオリティを追求できるよう、意識し続けたいとおもいます。