ディレクション入門

会社で企画や提案が通らない理由をディレクション目線で考える。

企画が苦手なんです。という声をよく聞くってのは前にも記事にしたような記憶があります。

今回はそのネクストステップとして。

「せっかく作った企画なのに、なかなか通らないんです・・・」という悩みを頂いたので、ちょっとそのあたりをディレクション目線で解決できればな、と思ってます。

正直、企画するのは好きな人にとっては簡単です。
思いつきを取りまとめたら良いだけだから。

でも、それを「通す」あるいは「コンペで勝つ」となるとかなりハードルが上がります。

なぜか?

そりゃ、予算だったり、評価者である他者の感性、感覚だったり、その他もろもろの社内政治だったり、いろんな要因が絡んでくるからですね。

それでも、通る企画は通ります。
今回はその辺りを少しだけ、掘り下げてみたいと思います。

企画が通らない理由ってなんだ?

先ほどの、社内政治や予算といった、外的要因はひとまず置いておいて、評価者の感性、感覚の違いに絞った話になりますが、そもそも企画が通らない最大の理由は、その企画がつまらないからじゃないと思ってます。

ちょっと厳しい言い方だけど、面白いと思えるほどにブラッシュアップできてないだけ。
つまりは準備不足なことがほとんどではないかと思ってます。

極端な例ですが、焼きかけのお好み焼きを見て美味しそうと言う人はいないですよね?
最後までちゃんと焼くのは当然。

そして、上手く焼くためには準備も必要です。
しっかり混ぜる。
鉄板を熱して油を引く。
最適なタイミングでひっくり返す。
ソース、青のり、鰹節のかけ方だって、美味しく見せるための大事な要素です。

企画も、このお好み焼きくらい大事に焼き育てる必要があるかな、と思うのです。

逆にいうと、良い企画思いつきました!ってのはまだまだ単なる材料の寄せ集めでしかないということなんですよね。
生野菜と生の豚肉を小麦粉で溶いた水に混ぜ込んだだけのものを見せても、誰も「美味しそう!」と言ってくれないのと同じ理屈です。

これは感性、感覚に頼った「企画の素」であるアイディアを思いついただけの状態。

「考えるな感じろ」ってのはあくまで一部の天才の人たちのための言葉であって、凡才でしかないボクはひたすらに考えて考えて考え抜く意外に手はないと思ってます。

その企画が「なぜ良いのか?」あるいは「どこをダメと言われるか?」この辺りを徹底的に考えて、しっかり補強していくわけです。

なんとなく。ではなく、そこを言葉に出来たら、きっと企画は通りやすくなると思います。

自己満足になってないか?

これはそもそもの話になりますが、「自己満足」で止まっている企画は通りません。
企画の理由が「自分がやりたいから」はモチベーションにはなるけど、他人を説得して動かす理由にはならないからです。
ここがしっかり理解できていない人は意外と多いですね。

もちろん、企画のタネとなるアイディアを考える時に、まずは自分の好きなこと、興味あることからスタートさせるのは悪くないんです。

発想もしやすいし、すでに多くの情報を持ってるから取り組みやすいはずなんですよね。

学生時代にバスケをしてた人はNBAやBリーグに絡めた企画を思いつきやすい。
料理が趣味な人は料理を生かした提案がしやすい。

これは自分のアドバンテージなので、むしろ大事にしましょう。
でも、そこで止まってしまうともったいないですね。

企画は誰かのためにあることが大事です。
だからこそ、自己満足で終わらないように意識しましょう。

自分にとっての面白い企画が、他の人も面白いと思ってくれるかどうかはわからないわけです。
例えば、自分にとっては最高に面白いバスケが、サッカーファンにとっては何をやってるのかわからないように。

しかも、自分とは違う年齢や性別の人ならなおさらですね。
それ以外にも価値観や経験、知識や立場などの条件で人の「面白い」は変化していきます。
だからこそ、より多くの人が面白いと思ってくれる企画にする必要があるわけです。
逆に、10人に聞いて、一人も面白いと言ってくれない企画は見直した方が良いかもですね。
打率が低すぎるというか、そもそもゼロだからです。

そして、どんな企画なら興味がない人でも面白いと思ってくれるかというと、ちょっと良くなる「未来」の提示。なんだと思います。
企画もいわゆる「クリエイティブ」の一つで、やはりそこには「課題解決」の目線が必要なんです。

だからみんなにとっての「ちょっと良い未来」を提案することが大事になるわけですね。
ここを無視して、自分だけの視点で企画をしても、幸せになれる人がいないとその企画は通らないんですね。
誰の、何のための企画か?
ここを何度も考えるようにしましょう。

アイディアの育て方

さて、先ほどの「企画の素」であるアイディアの部分ですが、これをどう調理して美味しそうなお好み焼きに見せるか、つまりはアイディアをどう育てるか、という部分を考えてみましょう。

よく言われることですが、アイディアは

1)広げる
2)選ぶ
3)磨き上げる

の3ステップで洗練されていきます。

これはボクも企業さんのプロジェクトのクリエイティブ・ディレクションをするとき、企画提案では必ずやってることですね。
もはや、息をするレベルでこの手法を使っているような気がします。

まず、そもそもの部分で、たくさんのアイディアが出ないと選ぶことすら出来ないわけですね。
だからまずは数を出すってのは理屈にあってます。
ワンアイディアに固執して、他を考えられなくなるのは、企画でのよくある失敗例の一つですね。

アイディアに数が必要なのは、それを絞り込むためです。

例えば、3つしかない中から選ぶのと、30個の中から選ぶのでは、アイディアの精度が変わるのは当たり前ですよね。
圧倒的な思考量というバックグラウンドがあるからこそ、「ピカイチ」のアイディアが生きるようになるわけですね。
アイディアは、幾千万の屍の上でこそ輝く。というのを覚えておきましょう。

ただし、この時、数を出すことの方が目的になってしまうと本末転倒だとも思ってます。
何のための数か?という部分がとても大事です。

また、これは時と場合によるのですが、たくさん考えたアイディアから、選りすぐりを選ぶ時、ついつい「このアイディアとこのアイディアを足して…」とか考えてしまいがちになります。

でも、そんな寄せ集めの幕の内弁当は魅力に欠けるわけです。
アイディアを掛け合わせるには、それ相応の条件とスキルが必要ですが、この話はまた長くなるので、別の機会にでも。

選ぶということは、それ以外の物を捨てるということ。
まずはコアアイディア一つだけにすることを考えましょう。

そして、そのコアアイディアを可能な限り研ぎ澄ませます。
ここが磨き上げる、の部分です。

よく、新人の方に、じゃあ、このアイディアをもっと練ってみて。と伝えると、翌日全然違うアイディアを持ってきたりすることがあります。
残念ですが、それは別案であって、コアアイディアの洗練ではありません。

洗練させるということは、穴をなくし、研ぎ澄ますということ。
予算や人員のバックグラウンドや、その企画をやるべき意味や意義などを含め、トータルで企画を磨き上げるのです。
プレゼンや打ち合わせでどこをどう突っ込まれるかを予想するのも大事ですね。

この洗練度が企画を通すためにはとても大事になります。
ここの練度には、もしかしたら慣れやキャリアが必要かもしれません。
もし、自分にキャリアが不足してると感じるなら、どんどん先輩や同期を巻き込んで、企画の練度を高めるのがオススメです。
自分では見えていない世界を、他人は持っているからです。

最終的に企画がまとまったとき、それをプレゼンスタイルで提案するのか、企画書として提出するのかは状況によって変わると思います。
それはそれとして、企画はなるべく短く、簡潔に、しかし濃度を高くまとめておくことがオススメです。

ちなみに、ボクがまだ新人の頃、「企画書はA4片面一枚に収めるように」と教わりました。
当時、その理由まで教わってなくて、そういうもんだと言われたままに書いていましたが、今ならわかります。
企画には短時間で多くの人に伝わるだけの魅力が必要で、そのためには分かりやすく、簡潔に濃縮してまとめることが大事になるわけです。

そして、プレゼン資料や企画書は、そのペライチをベースに作成するというわけです。
これは意外と資料作成も楽になるのでオススメです。

企画の良し悪し

最後に、企画の良し悪しについて少しだけ。

「良い企画って何ですか?」

と聞かれた時、どう答えるのかはいつも迷います。
正直、これ、という答えはまだボクの中でも言語化できていないというのが正しいかもですね。

逆に、良くない企画って何ですか?と聞かれると比較的答えやすいです。

その一つとして言うのが、「理屈ではなく生理的に受け付けない企画」ってのがありますね。
炎上商法なんかはこれに該当すると思ってて、認知は広まっても愛されないやつです。
最初から炎上狙いの企画は、ボクはオススメしません。

一方で、企画段階から多くの人に否定されたり、ツッコミを入れられる企画が「ダメな企画」なのかと言われたら、決してそうではないんです。

確かに不明確な部分や不透明な部分が多いからこそ否定的な意見が出るのだけど、逆に言えばそれは補強アイディアってこと。
審議や否定すらされない企画ほどダメなモノはないですよね。
否定意見を怖がる必要はありません。
それはまだその企画が「生きてる」証みたいなものだから。

むしろ、誰からも相手にされない企画の方を恐れましょう。

ちなみに、「良い企画」ができるときって、ブレストにしても、一人で発想してても、アイディアが止まらないことが多いんです。
横展開だけでなく、縦に深堀りもされていく、まさに思考が縦横無尽に駆け巡るイメージですね。

そして、これができる時は間違いなく揺るぎないコンセプトが明確になっています。

大きな軸があるから、そこから発想が飛躍するんですね。
これは単なる思いつきではなく、軸をもったアイディアの連鎖反応になるわけです。

なので、企画では枝葉よりもまず幹を先に描くようにしましょう。

コンセプトは、全てのクリエイティブの核となる、大事なものですから。

良ければ、こちらの記事なんかも参考にしてみてください。

それではまた!

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「ディレクション」は武器になるシリーズ

はじめてのディレクション
〜スペシャリストでないあなたが「見えないスキル」を形にする方法〜

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第4回|”進行管理”と”ディレクション”の違いはなんですか?〜前編〜

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ABOUT ME
Andy
we.編集長/Design Offiice io COO./Creative Director|東京⇆京都の2拠点生活。| 企業の経営課題を解決するデザイン・コンサルやクリエイティブ・ディレクションやってます。|ミニマル思考と独特の着眼点で「?」を「!」にする発想・提案が得意。|日本のビジネスにクリエイティブの革命を起こしたい。