ディレクション入門

第4回|”進行管理”と”ディレクション”の違いはなんですか?〜前編〜

この連載は「得意なことがない」「スペシャリストにはなれない」と悩んでいる方が「ディレクション」という武器を手に入れるための入門書です。

何者にもなれない悩みをクリエイティブ・ディレクターのAndyさんにぶつけて、自分の武器を手に入れるヒントを一緒に探してきましょう!

あなたには、「ディレクション」という武器がある!

こんにちは。
編集/ライターのあさのみです。

はじめてのディレクション〜スペシャリストでないあなたが「見えないスキル」を形にする方法〜、前回までの3回で、「器用貧乏は武器になる!」というマインドセット編をお届けしました。

今回の第4回目からより具体的に、「自分の中に眠っているディレクションスキルをどう磨くのか」「どうやって武器にしていくのか」という話をAndyさんに聞いていこうと思います。

今回のご相談

 

進行管理とディレクションはどう違うのですか? 自分のしていることはディレクションではなく単なるスケジュール管理なんじゃないかと思うと武器にはならない気がします。
質問者:31歳 ユキ(仮名) 会社員

Andyの回答  「進行管理もディレクションスキルのひとつ。しかし、カレンダーだけをみているやり方では、ディレクターとしては少し足りないかもしれません。”スケジュールコントロール”ではなく”チームコントロール”だと思ってやってみましょう!」

質問者さんは、「ディレクションって要は進行管理のことですよね。それは確かにできるのだけど、それって、社会人として当たり前のスキルな気がして…」と、自信が持てないご様子でした。

「スケジュール通りに進行させる」というスキルも、質問者さんのように息をするように自然にできる人もいれば、かなり意識しないとできない人もいると思うので、十分立派なスキルなはず。

でも、確かに、「進行管理をするだけ」では、武器になるような価値にはなりづらい、という気持ちもわかります。

進行管理力を磨いて武器にするにはどうしたらよいのでしょうか?
Andyさんに聞いてみました!

進行管理って、ディレクションって、何のために必要なの?「目的」に立ち戻って考えると…

「進行管理」も、もちろん、ディレクションスキル。

ディレクションは複数のスキルの集合体なので、その中の1つなんです。
図で見てみると、左側にありますね。

では、ここで1つ質問です。

進行管理をする目的はなんでしょうか? A〜Cの選択肢から選んでみてください。

A 目的はない、仕事とはそういうものだ
B クライアントとクリエイター、それぞれの納期を守るた
C リソースを最大限に活用して、最大の成果を出すため

Aという側面はあるかもしれません。
「仕事だからやる」わけです。
いちいち、「この仕事の目的は…」と些細なことを深く考えすぎていては進まないこともあるかもしれない。
「おい! いいから早く手を動かしてくれ!」という上司の声が聞こえてきそうです…笑

Bももちろん必要なこと。
納期が守れないと信用も失いますし、頑張って取り組んできた仕事がどんなに素晴らしいものであっても、間に合わなければ意味がなくなってしまうこともあります。

ちょっと意地悪な質問だったかもしれないですが、実は正解って人それぞれなんですよね。 正解がないものに対して、自分なりの正解を導き出すのも一つの「ディレクション」であるとボクは考えます。

そういう意味では、ボクとしては「ディレクターとしての価値」を意識するならCの意識を持っておくことが大事だと考えています。

ディレクターはなぜ必要なのでしょうか? 「予算」「スタッフ」「時間」など、そのプロジェクトのリソースを最大限に使ってその成果を最大化するためにはディレクターという仕事が欠かせません。

その中のひとつに「スケジュール管理」があるのですが、それだけでは、なかなか成果は出せないですよね。 納期には間に合ったけれど「まあ、こんな仕上がりになるよね。

「想定内…」みたいな、ジャンプアップのない仕事よりも、「1人では思い描けなかった成果をチームで達成することができた!」という仕事をしたい。

想定を超えて成果を出していくには、ディレクターが不可欠なのです。

カレンダーだけを追うのではない!「スケジュールコントロール」という意識を「チームコントロール」という意識に変えてみよう!

では、どうやっって、「進行管理」を「成果がもっと出せるもの」にレベルアップさせるか。 そのヒントが、質問者さんの意識の中にある気がしています。

「進行管理」=「スケジュールコントロール」だと捉えていませんか? それを、「チームコントロール」だと再定義してみてください。
ディレクターは、チームで仕事をするときに活躍の機会が多いはずです。

複数のプロフェッショナルや、クライアント、または上司などの決済者、などなど、プロジェクトには多くの人が関わります。 (一人で行う業務でも、自分で自分をディレクションするという意味では非常に重要ですが、それはリクエストがあればまたお話しします)

立場やスキルの違うそれぞれの人が、がひとつの目的をブレずに共有し、やりがいを持ち、その人の立場で最大限に力を発揮すれば、「1+1=2」以上の成果がでるはずです。

「進行管理」はカレンダーをみて後ろから逆算し、お尻を叩いて、仕事と仕事の間をつなぐ伝書鳩のような側面だけでなく、チームに関わる人たちが、滞りなく、クオリティを高める」ためにあるのです。

このように再定義すると、進行管理という仕事の中でも ディレクターとして、自分のすべきこと、できることの範囲が「カレンダーをみて滞りなく進める」ということ以上に広がってくるのではないでしょうか。

ディレクションはクリエイティブ業界でよく使われる言葉ですが、こうやって考えると、どんな仕事にも必要な仕事ですよね。 さて、今回はここまで。

このテーマは次回、後編に続きます!

次回(後編)の予告

進行管理は、スケジュール管理ではなくチーム管理。
そうとらえると、カレンダーを凝視するのではなく、もちろんカレンダーはしっかり押さえながら、見るべきはチームメンバーの動向なのかもしれません。
視点が変われば、自分のすべきこともまた変わってくるのではないでしょうか?

さて、次回の後編は、進行管理をしながら「チームコントロール」をして成果を出すコツをタイプ別に教えていただきます。

次回 後編テーマ

「チームコントロール」をするには「進行管理」に「自分の個性や得意」を掛け合わせる! 例として4つのタイプの力の発揮どころを紹介します。
あなたにできそうなものはありますか?

■「進行管理」×「リスクマネジメント」=狙撃手型(スナイパータイプ)
■「進行管理」×「モチベーションコントロール」=将軍型(ジェネラルタイプ) ■「進行管理」×「情報整理」=軍師型(アナリストタイプ)
■「進行管理」×「自己スキル」=遊軍型(ユーティリティタイプ)

告知

「武器がない」と悩む方からの質問を募集しています。
年齢、立場、悩み事(ざっくりでも具体的なシーンに関してでも)を書いて、Andyさんに悩み相談をするような感覚で、お気軽にこちらにお送りください。
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「ディレクション」は武器になるシリーズ

はじめてのディレクション 〜スペシャリストでないあなたが「見えないスキル」を形にする方法〜

第1回|器用貧乏で、何者にもなれない自分がコンプレックスです

第2回|ジェネラリストを名乗れるほど、すべてが完璧にできるわけではないのですが…

第3回|いろいろやりすぎて、何年経っても専門性が身についている気がしません

第4回|”進行管理”と”ディレクション”の違いはなんですか?〜前編〜

第5回|”進行管理”と”ディレクション”の違いはなんですか?〜後編〜

第6回|”リーダー”と比較するとわかる。”ディレクター”のこれだけははずせない必須スキルとは!?〜前編〜

第7回|”リーダー”と比較するとわかる。”ディレクター”のこれだけははずせない必須スキルとは!?〜後編〜

 

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we.の収益は全て「クリエイティブの価値を高め、広め、深める。」の理念の元、メディアwe.の運営や、それに付随する全ての活動に使わせていただきます。

ABOUT ME
企画・執筆|いずみの編集室 あさのみ ゆき
フリーランス編集者、ライター。専門は子どもの知的好奇心をテーマにした読み物。日常の中にある知らなかったわくわくや初めての発見を見つけられる誌面作りにこだわっている。 「私自身も、専門家としての突き抜けられなさに悩んでいる1人です。だけど、たくさんの専門家に取材をしてきて思うことは、自分がわくわくすることに根気強く向き合えば、必ず一人ひとりに合った道が見つかるということ。この連載を通して、共に”知らなかった自分の力”を発見していけると嬉しいです。」