COLUMN

広告とは何か?プロモーションとは何か?クリエイティブとは何か?〜デジタル100%世界での渇望〜

なんか今年に入ってから一気に世界線が変わった気がしてる。
在宅、リモートが当たり前になって、人と対面する機会がほとんどなくなった。
電子の中に閉じ込められたやり取りから生まれる広告やプロモーション、クリエイティブがどんどん世の中に溢れていく。

それはある意味では改革だし、良いことなんだと思っている。
変化そのものを受け入れないつもりはないし、むしろボクは積極的に変わっていきたいと思っている側だ。

その一方で、どうしても手応えを感じることができず、鬱々とした葛藤を抱えていたこともまた事実だ。
それの原因を探し続けた半年間だったのかも知れない。

まだ、答えが出たわけじゃない。
でも、なんとなく、その原因がわかりかけている気がする。

それは簡単に言うなら熱量や活気といった言葉に置き換えられるかも知れない。
そんな簡単な言葉では説明しきれないのは重々承知の上で、ボクはその熱量や活気を求めてる。

今回はそんな、デジタルオンリーでは感じることのできない、感覚的な領域の話。

失われた世界。

理想論かも知れないけど、クリエイティブやエンターテイメントは全ての人を楽しませ、喜ばせてこそだと思ってる。

そう言った意味では、コロナ禍の世界にあって、まず最初に奪われたのは「リアル・エンターテイメント」だった。
イベントも、ライブも、スポーツも、旅行や飲食だってそうだ。
ボクらはリアルに味わえる、極上のエンターテイメントをある日突然取り上げられた。

残ったのは、恐る恐る触れる、アンタッチャブルなリアル世界。
生きること、食べること、生活することだけを許された、とても不自由で不都合な世界だった。

もちろん、その一方で伸びたエンターテイメントもある。
それが「デジタル・エンターテイメント」だった。

どうぶつの森や、ニンテンドースイッチ、あるいはAmazon primeや、Netflix、YouTube配信など、PCやスマホを介して、世界中が「デジタル・エンターテイメント」にアクセスした。
Ubereatsみたいな半リアルの中でデジタルツールがあることによって躍進した企業や経済もある。
これはとても良いことだったと思ってる。

ここから本当なら3〜5年くらいはかかったであろう成長や発展が、この半年の間に一気に引き起きた。
ボクが「強制イノベーション」と読んでいた部分だ。

でも、それ(デジタル・エンターテイメント)しかなくなった世界は、ボクの中ではやはりどこかで彩りを失っていた。
ボクに限って言うなら、リアルとデジタルが本来ならどちらもバランスよく存在することがこの世界に潤いを与えてくれていたのだ。

さて、冒頭に「クリエイティブやエンターテイメントは全ての人を楽しませ、喜ばせてこそだと思ってる。」と書いた。

そのうちの一つ、エンターテイメントはリアルとデジタルで大きな境界線が生まれた。
では、クリエイティブ はどうだったのだろうか?

実は、ここでも大きな流れの変化というか、変遷が起きていたのだとボクは感じている。

リアルな部分では、現場での取材や撮影の案件は軒並みストップした。
すでに動き出していたものに関しては、何とか撮り終えたものもあったけど、多くのものが「保留」とされたのだ。

そして、クリエイティブはどこかしら必ずエンターテイメントと連動している部分がある。
旅行、観光、アウトドア、飲食、いろんなところに影響が出てきた。

そんな状況の中でのプロモーションは、より難しい。
独りよがりにわめき散らして、デザインだ、マーケだ、戦略だ。って言ったところで誰にも届かない。
届いても、受け入れてもらえない。
瞬間的な認知は上がるかもだけど、長期で見たらマイナスになるだけだから。

広告、宣伝は「届けたい人」に「ちゃんと届く」ことが大事で、そのためにボクらは知恵を絞り、アイディアを出し、死にものぐるいで考える。
だから、良いアイディアは、関わった人たちみんなを幸せにする。

無理やりバラ撒かれただけのチラシはただのゴミだ。
ウェブ上でもそれは同じで、電子を纏った、ただのゴミなのだ。

では、このコロナ禍において、クリエイティブは価値を失ったか?というとそうではないと思ってる。

より、最適に届ける方法を何人ものディレクター、デザイナー、クリエイターが考え抜いて世に放たれた。

SNSの中ではハッシュタグで「想像力が世界を救う」と言ったキャンペーンが展開され、
ミュージシャンがYouTubeを使ってコラボし、ウェブにはクリエイターによるセミナーやトークイベントが溢れ、
ローソンはプライベートブランドをリニューアルすることで新しいデザインの方向性を提案してくれた。

世界は、やはり変化していたのだ。

そんな変化の真っ只中で、ボクらクリエイターは意識、無意識を問わず、やはり何かを生み出し、発信し続けてきたのだと思ってる。

クリエイティブが持つ力

そういう意味では、この半年間は個々のクリエイターが、それぞれの思いとスキルで、さまざまなことに挑戦してきたと思ってる。

クリエイティブに正解はない。
だからこそ、他人からどうこう言われる筋合いなんかない。
それぞれが考え抜いた末のアウトプットを何もしてないヤツが笑ったり、けなしたりするような殺伐とした時代にしちゃダメだと、心から感じた。

ボクはよく言ってるけど、「クリエイティブ」は「課題解決」だ。
もちろん、自分の内なる疑問や葛藤を解決するためのクリエイティブもあっていい。
一方で、クライアントがいるなら、出来るだけその課題に寄り添うようにする。
これはプロとしては当たり前のことだと思ってる。

そして、課題を解決するには、ボクは「熱量」が大事だと思ってる。
チームとしての活気と言っても良いかも知れない。
ここが、デジタル世界ではとても共有しにくかった。

事務的な情報伝達、空気や感情の読めないプレゼン、テキストコミュニケーションの限界。
この半年でそうした地味で小さなストレスを積み上げてきたのだと思ってる。

親身になる、寄り添う、同じ志を持つ。

デジタルだから出来ないと言いたいわけじゃない。

ただ、リアルよりも容易ではない、とは感じている。

もちろん、これはボクだけが感じてる古い感覚、考え方なのかも知れない。
もしボクはこのコロナ禍で20代だったら、そんなことすら感じることなく、このデジタル100%の世界に順応できたのかも知れない。
でも、それは全部たらればなんだ。

もちろん、今後もオンラインミーティングは使っていく。
便利な道具を否定するつもりは全くない。

一方で、ボクはリアルの大切さに気がつけたし、リアルを貴重に扱えるようになった。
世界だけでなく、自分もまた一つ、進化したのだ。

その解決するべき課題は「パズル型」か「ミステリー型」か?

さて、この時代のクリエイティブにおける問題は、何も情熱や活気だけじゃない。

以前、『クリエイターが解決するべき課題は「パズル型」より「ミステリー型」の方が増えてきてる。』みたいな記事を書いたことあるけど、それが今まさに加速しまくってると感じてる。

例えば『感染を止めつつ経済を回す』なんてのはその典型みたいなものだ。
いま、多くのクリエイターがこの課題に挑んでる。
もちろん、クリエイターだけじゃなく、多くのビジネスマン、経営者、個人だって同じ。

リモートワークの導入なんかは分かりやすい例で、いち早く対応できた企業と、今でもまだ出来てない企業で今後の明暗ははっきり分かれると思う。
これを題材に、少しだけ思考を深めてみよう。

ここでまず大事になるのは『なぜ取り入れられないのか?』の方。

リモートワークにできない理由が「お金」や「設備」など、「準備さえできれば対応可能」な部分だったらこれは「パズル型」の課題。
もちろん、お金をどう調達するかの課題は残るけど、少なくとも条件次第では解決策が見えてくる。

一方で、タチが悪いのは「経営者にその意志がない。」の方だ。

例えばこれが「仕事は会社でするもの」という固定観念だったりすると、一気に課題は複雑化する。

「サボり」という不安とか、「効率が落ちる」とか、仕事は一緒にするものとか、いろんな思い込みは、複合的で解決の糸口を見つけるところから始まる。
だからより「働きやすく」「効率が上がり」「組織としての一体感が出る」ことを他が証明する必要がある。

逆に言うと、これが出来ないと時代に遅れるってことにもなる。

早い人は柔軟で、素早く、また直感的に動ける。
遅い人は優柔不断で、腰が重く、また前例にしがみつく。

クリエイティブの課題解決は間違いなく前者の思考を持ってないと成立しない。
変えること、最適化することが最優先。
現在を守ろうとか、過去の栄光を大事にする経営が取り残されるのは当然。

そして、仮に例え同じことをしていても、意識を変えたら攻めの姿勢を保てる。

また、緊急事態宣言下では、飲食店が営業自粛や時間短縮を余儀なくされた中で、お弁当やテイクアウト販売に切り替えた店舗さんが一気に増えた。
これは考え方によってはとても良い流れだと思ってる。

まず、それだけ柔軟に対応しようとした経営者の方が数多くいたこと。
もちろん、右に倣えの無思考でスタートした店舗だってあると思う。
でも、やらないより、やる方がいい。

ここで大事なのは売り上げよりも、新しい顧客に向けての広報戦略と捉えることが出来るかどうかがポイントだと思ってる。

今まで馴染みの店にしか行かなかった人や、敷居が高くて入れなかった学生、自分の家で作るからターゲットになり得なかった主婦層など、これまで意識して呼び込もうとしていなかった顧客へ「テイクアウト」という手段で自分たちの味を伝えることが出来る。
プロの味が家で500円〜1000円で楽しめる。

そうなれば、ポストコロナの新時代では

・実はあの店が好みの味だった
・ちょっとしたハレの日に行く
・毎日料理しなくてもいいかも

みたいな多様な選択肢を既存客以外の人に与えることが出来る。

そう考えたら、テイクアウトに切り替えて試してみた飲食店は攻めてるってことになる。
新規のアプローチをしてるから。

もちろん、苦しいのは当然だし、そのママでいいとは思ってない。
でも、耐えてる。と考えてると苦しい。
そうではなくて、今の状況で出来る最善の策を取ることが、次の時代への戦略になる。

適応って言葉が正しいかはわからないけど、ボクらは今、そんな時代の過渡期を生きてるんだと通説に思う。

ミステリー型課題はなかなか解決策がない。
でも、諦める必要はない。
みんなで、攻めよう。

最後に

先日、久しぶりに渋谷に行った。
大きく変わった街並みに、思いがけない刺激を受けた。

ボクが立ち止まっている間にも、世界は大きく変わってる。

取り残されていいのか?

答えはNoだ。

広告とは何か?プロモーションとは何か?クリエイティブとは何か?
この先も、ボクは答えの出ないこのミステリー型課題を考え続けていくだろう。

デジタル100%世界での渇望は終わらない。

 

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第2回|ジェネラリストを名乗れるほど、すべてが完璧にできるわけではないのですが…

第3回|いろいろやりすぎて、何年経っても専門性が身についている気がしません

第4回|”進行管理”と”ディレクション”の違いはなんですか?〜前編〜

第5回|”進行管理”と”ディレクション”の違いはなんですか?〜後編〜

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Andy
we.編集長/Design Offiice io COO./Creative Director|東京⇆京都の2拠点生活。| 企業の経営課題を解決するデザイン・コンサルやクリエイティブ・ディレクションやってます。|ミニマル思考と独特の着眼点で「?」を「!」にする発想・提案が得意。|日本のビジネスにクリエイティブの革命を起こしたい。