ディレクション入門

動画制作ディレクション入門⑤|企画・構成とその注意点

Andy
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さて、ここからは実践編。まずは企画・構成からです。

企画を考える

例えば、webCMを作りたいというお話を頂いたとしましょう。

どのような物が良いか、まずは代理店関係者さんとの間でざっくばらんなブレストからスタートします。
そのブレストで出たアイディアをいくつか企画書(画コンテ)に落とし込んで、クライアントさんに対してプレゼンをしに行きます。
当然ですが、プレゼンの仕方によって、作成資料は変わります。

例えば、まだ提案段階のレベルで、予算指示がとくにない場合、ひとまず思いつく限りでA〜Dまでの4パターンを作成して一回プレゼンに行ったこともあります。

結局GOが出るかどうか分からない状態だったのでも、企画はもちろん本気でやりますし、どの案が採用されても良いように準備しています。
逆に、先に予算ありきだと、そこでやれることしか絞り込めないので、提案が少なくなりがちですね。
バリエーション違いでしかやらないみたいなこともあります。

ちなみに、この企画書に落し込みをする一歩手前に、手書きでラフコンテを書いてます。
別に点と丸で書いても意味が伝われば良いかな、というレベルで。
コンテというよりはラフラフのレベルです。
それで制作側のクリエイティブイメージを統一しておく、ということですね。

打ち合わせでは、その場でラフを書いたりして、この流れですかみたいな話をしながら、最後に残った物を綺麗に清書して整えていく感じです。

企画・構成の注意点

ここで気を付けるべき事は色々あります。

まず、ひとつは目的の設定です。

「何の為に作るのか」がすごく重要で、今編集も皆さん出来るし写真動画素材もiPhoneで取れちゃうので、綺麗な作品はいくらでも作れる時代です。

でも、「なぜ、それを作るのか」っていう部分ですよね。

むしろ動画ではなく、別のプロモーションに予算をかけたほうが良いって提案もあったかも知れません。

このあたりはヒアリングのときにしっかり詰めておきたいところです。
クライアントさんが求めているものって何なのかをキチンと落とし込んでおくことが重要です。

バズれば良いのか?

「バズらして下さい。」って言われた時代もありました。

動画でも、「雪道怖い」とか、「壁からドン」とか、非常に有名なバズった作品は数多くあります。

雪道怖いって動画は、雪山を車で走ってると、突然おばけがフロントガラスにバーンてぶつかってくるやつですね。
インパクトは強いですし、驚いた人は友人にも見せて驚かせたいと思う。
そんな心理が働いて、動画はバズったんです。

でも、その動画の言いたいことは「雪道は怖いから気をつけようね。」ではなく、その先にある「スノータイヤを使おうね」なんです。
この動画はバズったけど、結果としてスノータイヤは実はそんなに売れてないんです。

このクリエイティブの目的が、「雪道の怖さ」を認知させる、ということならまだOKなんですが、「スノータイヤを売る」だった場合には適切なクリエイティブではなかったということになります。

あの当時、2014年とか13年なんですけれども、バズらせることだけを目的にしてた時代はあったけれど、結局おさまったのはそんなに消費行動に直結しなかったからなんですね。

もちろん、「一時的に話題になる」という目的なら問題ないのです。例えば企業名とか売りたいのなら、まだありだと思うのですけど、商品を売りたい時にそれは使えないですよね。

少なくとも、そのあとの受け皿となる二の矢、三の矢を用意してないと、ただのお祭りになってしまいます。

なのでクライアントさんが「よくバズらして下さい」とか、「PV数があればOKです」とかよく言うんですけど、そこを目的にするのは違うと思ってます。

もちろんPV数は、あった方が絶対いいんですけれど、それ以前に、本当にしたいことは何かっていうところまで、企画で落とし込んでおく。

そうでないと、出来たものが、こういうつもりじゃあなかった、ただ派手なだけで終わったりします。

バズるのは結果としてそうであるだけで、目的にするのは要注意です。

テレビとWEB動画の違い

もちろん、Web動画の場合は売り上げに直結するかどうかという部分では、試算が取りにくいです。

でも、テレビとWEB動画の違いって明確で、WEB動画の方がお客様が能動的に見に来ます。興味関心があってくるから丁寧にちゃんと見せてあげた方が、効果は高い。

そういう意味では、Web動画はテレビCMみたいに、つけてたら流れてて、無自覚に飛び込んでくるものではないので、そのあたりを意識しながらどういうテーマを設定して、あるいはどういう見せ方をするみたいなところは、企画のうちからしっかり詰めてクライアントさんとの間の共同のコンテンサスは持っておいた方がいいだろうなと思うワケです。

かわいいのがいいね、とかワイワイ盛り上がるんですけど、そのかわいいってなんなのっていう部分とかの詰めが大事ですよね。

これはデザインでも皆さんそうだと思うんですけども、可愛ければ誰に刺さるのかっていうのが大事だと思うし、その刺さりたい年代がどこなのか、そう言ったところは動画でも同じかなと思います。

プレゼンテーションについて

次の注意点としては、画コンテ・台本を使ったイメージの共有について。
企画が固まってくると、クライアント提案のために画コンテだったり台本に落とし込みます。

これ、結構企画の時に言われるんですけれど、「じゃあ画コンテ出して下さい」ってやつですね。

画コンテ描くの構わないんです。
さっきの、1分動画くらいのものだったらさくっと作るんですね。

でも、10分くらいのドキュメンタリー物って、画コンテ書いてたら本当漫画を描いているようなもんなんですね。
さすがにそこまではできないことの方が多いと思います。

ここで重要なのは、画コンテの有無じゃなくて、プレゼンテーションなんです。
提案をその場の話でわかってもらう。

例えば今ある動画を見せてこんな感じですよね。っていう話をするわけです。

情熱大陸を見せてこのテイストにしますね。っていう話をして、ナレーターさんもそのような声に近い人を選んだりとかって、イメージの共有ですね。
音楽もまんま使うとちょっと、問題が色々あるので、似たような雰囲気のものを作曲してもらったりします。
そうしたときのイメージの共有が大事ですね。
しっかりとコンセンサスを取りながら進めていく部分です。

情熱大陸にしたいわけではなく、情熱大陸ぐらいリアリティがある、ちょっとした感動を見ている人に与えたい。
そう言ったものになれば成功というか、狙いが伝わってることになるわけです。

そのあたりの、目的とターゲットの絞り込みはすごく慎重にやります。

逆に、画コンテだけを出して何の説明もしないで内容を納得してもらうっていうのは、できないって思ってた方が良いですね。

箇条書き3行くらいの企画書でもちゃんと説明して、わかってくれれば「ああ、そういうことだよね。」となります。

その共感、納得が深ければ深いほど、企画が成功に傾くんじゃないかと思います。

なので、企画書や画コンテよりも、プレゼンテーションを大事にして、話していった方がいいかなと思います。

作品のスケジュール・予算・クオリティの管理

ディレクターとして制作の進行管理していかなくてはいけない。
それって、つまりは予算と納品物のクオリティー、スケジュールのバランスですね。

制作スタッフの人数増えれば、いくらでもクオリティーあげられるんですけど、本当にそのお金出せますか。ってところは後々やるとめんどくさいです。

先に絶対詰めとかないと。
「ご予算おいくらぐらいですか?」と聞いておかないと、すごく苦しいことが起きます。

逆に、お金が無いのなら、その範囲で出来る提案をこっちがしないと話が進まないわけです。

コンペとかだと、取りに行くしかない状況もありますが、与えられた表示金額の中で最高のクオリティを出す。これは非常に大事なことです。

予算やスケジュールに縛りがない時ほど、多分最初にしっかり詰めた方がいいですね。

もちろん、代理店が入ってて交渉してると何も言えないわけですが・・・そういうジレンマみたいなのがあると思うんですけど、代理店の方にも密に連携取りながら同じ方向を向きながらやっていけるといいですよね。

クライアントの側しか見ない代理店の方もいらっしゃるので、どうしても言われたことだけこっちに来る。そうなると結構苦しくなりますよね。

その辺のバランスの取り方はしっかり意識してやっていった方がいいかなと。

予算に限らず、スケジュールもそうですね。

代理店として「これやってね」とか、クライアントとして「この日までやってね。」ってだけでは企画は全然進まない。

よくあることだと思います。

スケジュールについても制作ディレクターができるだけコントロールしていけるように意識するのは大事です。

早め早めに提案を出したりとか、スケジュールを組んで提案しちゃうとか。
これ以上のことは逆にできないですよ。みたいなことは言ってもいいんじゃないかな。

そのあとはコミニュケーションだと思うんです。

もちろん、言えない時もあると思うんですけど、そこをどう帳尻合わせるのがディレクターの仕事かなということですね。

予算とスケジュールとクオリティの綱引き

クオリティと予算とスケジュールってのは3点が三角形をつくって綱引きしながらやってるようなイメージで、一方を無理して伸ばすと、他の2辺は短くなっちゃう。

そうするとどうなるか?

二等辺三角形、つまり作品が歪になるんです。

できるだけ、正三角形で仕上げていくのが理想だし、そのためには一箇所に無理をかけないことが大事です。

しっかり、正三角形を保てるようにしたいですね。

 

Andy
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さて、次はいよいよ撮影についてです。
ABOUT ME
Andy
we.編集長/Design Offiice io COO./Creative Director|東京⇆京都の2拠点生活。| 企業の経営課題を解決するデザイン・コンサルやクリエイティブ・ディレクションやってます。|ミニマル思考と独特の着眼点で「?」を「!」にする発想・提案が得意。|日本のビジネスにクリエイティブの革命を起こしたい。