ディレクション入門

第3回|いろいろやりすぎて、何年経っても専門性が身についている気がしません

はじめてのディレクション
〜スペシャリストでないあなたが「見えないスキル」を形にする方法〜

こんにちは。編集/ライターの「あさのみ」です。

この連載は「得意なことがない」「スペシャリストにはなれない」と悩んでいる方が「ディレクション」という武器を手に入れるための入門書です。
何者にもなれない悩みをクリエイティブ・ディレクターのAndyさんにぶつけて、自分の武器を手に入れるヒントを一緒に探してきましょう!
あなたには、「ディレクション」という武器がある!

今回もAndyさんのTweetから。

そう、「ジェネラリストを極める」という道もある!!
でも、ジェネラリストはスペシャリストと違って「これ!」という道がなかなか見えなくて苦しい時期もありますよね。
今回はこんなご相談です。

今回のご相談

入社してもうすぐ10年になりますが、自分には”これ”といった特技がなく、異動も多いため専門性が身についていません。1つのことを極めている同期と差がつく一方で、自信が持てません。

リーダータイプではなく、常にチームの調整など地味な作業をしている感じです。すごく焦ります。

質問者:30歳 ヒロキ(仮名) 会社員

Andyの回答
ジェネラリストは、花開くまでに時間がかかることが多い。

その理由を説明します!

ディレクションスキルは可視化しづらく、クリエイティブ業界以外にはまだまだ浸透していないものだったりもするので、ご自身の会社の中で評価が得づらい状況もあるのかもしれません。

目立つのはリーダーや、特技のあるスペシャリストになりがちですよね。ついつい、どんどん活躍していく仲間と比べて落ち込んでしまったり。

「ジェネラリストは花開くまで時間がかかる」ってすごく勇気のもらえる話だけど、なぜなの?本当のなの?
Andyさんに詳しく聞いてみましょう!

スペシャリストが専門的なスキルを極めるのに3年かかるとすると、ジェネラリストは?

「1万時間の法則」をご存知ですか?

何かを身に付けて一流になるためには、1万時間ほどスキルを磨く時間が必要という話です。
スキルを磨くには一定の時間がかかるということですね。

スペシャリストとは、何か1つの分野に特化したスキルを持っている人。
1万時間ということは、1日およそ10時間、その分野に特化して取り組むと、3年後にはその道においての一流(スペシャリスト)になれるという計算です。

では、ジェネラリストはどうでしょう。

1つに特化するのではなく、複数の分野を行き来したりかけ持ちながらスキルを磨いていきます。
1つの分野を極めるのに3年かかるとすると、ジェネラリストはそれを複数こなしてプロになるのですから、スペシャリストより極めるのに時間がかかりますよね。

単純に計算すると、ジェネラリストは遅咲きなんです。

やってきたことは、きちんと積めています。
縦に積み上げるのがスペシャリスト。
横に広げて積むのがジェネラリスト。

縦に積む方が確かに、高いスキルに到達するのは早いかもしれません。
でも、横に広げながら積んでいくやりかたでもいいんです。
比較して、劣等感を感じる必要は、まったくありません!

そして、習得技能が横にならんでいる分野同士は、かけあわせたり、関連づけたりすることで力を発揮してきます。

器用貧乏は、”及第点”まで極めるのが得意。それはそれで武器になる。


ジェネラリスト、器用貧乏の強みに、7〜8割りにたどり着くのが早いというものがあります。
あなたには心当たりがありますか?

及第点にたどり着けば、他の分野のスキル取得のスピードがあがります。
ある分野で得たスキルを別の分野に転用ができ、理解が早くなるからです。
マルチタスク的に、複数分野にまたがりながら経験を積むことで
どんどんスキル取得の早さは増していくはずです。

つまり、ジェネラリスト、器用貧乏な人は「学習の初速」が誰よりも早いのです。

今回の相談者さんも、部署異動によって新しい業務を始めるときも、あっという間にだいたいのことを覚えてしまう、という経験もあるのではないでしょうか?

このように、なんでもだいたいできる人(器用貧乏の人)は、新しい分野を学ぶことに慣れていることが多いと言えそうです。

・以前の学び下敷きにできる
・学ぶための効率のよい方法を知っているため、無駄なく必要な情報にたどり着ける
・マルチタスクでもバランスを取りながら複数分野をこなせる

これってすごく利点ですよね。

なので、例えば5つの分野を身に着けるには5×3年=15年かかるわけではなく
7年〜10年くらいで身につけられるかもしれないですね。

確かに花開くまでに時間はかかるかもしれませんが、決して効率が悪いわけではないのです。

1つを極めても戦えないのがジェネラリスト。極めることは諦めてしまおう

「とはいえ、及第点では戦えないんだよ!」という声が聞こえてきそうです(笑)。

確かに、ディレクションスキルは、1つのスキル単体ではなかなか使いどころがないことも事実。

例えば、スケジュール管理を極めまくってそれだけで生きていくのは、なかなかイメージできないですよね。

しかし、スケジュール管理を7〜8割り極め、ヒアリング力を7〜8割り極め、企画力を7〜8割り極め…という風に組み合わせていくと…
それは、企画を具現化する実行力となり、総合的な力を発揮できます。

しつこいようですが、もう一度この図を掲載します。

スキルの粒1つ1つを単体で考えるのではなく、自分の得たスキルがどのように複合的に絡んでいるのかをマッピングしてみましょう。

1つずつをミクロの目でみると「何も身についていない」と悲観的になるかもしれません。

でも、マクロの目でみてみると、スキルが有機的につながりあって、その多くのスキルが7〜8割りに達した時、あなたはきっとディレクターとして花開くのだと思います。

点と点を線で結んでいけるように、自分の得たスキルを俯瞰してみてみましょう。

ジェネラリストは、1つのスキルを120%極めるより、70〜80%極めているものを複数持つ方が自分の個性にしやすいかもしれません。

自分なりのスキルの磨き方を見失わず、積み上げていくことが大事ですね。

1つの分野の「高さ」にとらわれず、自分の好きな領域でも、複数の領域でも、予期せぬ異動による領域でも、自分らしい形でスキルを積んでいきましょう!!

次回予告

「進行管理とディレクションはどう違うのですか? 自分のしていることはディレクションではなく単なるスケジュール管理なんじゃないかと思うと武器にはならない気がします」

質問者:31歳 ユキ(仮名) 会社員

Andyの回答
「進行管理もディレクションスキルのひとつ。しかし、カレンダーだけをみているやり方では、ディレクターとしては少し足りないかもしれません。”スケジュールコントロール”ではなく”チームコントロール”だと思ってやってみましょう!」

告知

「武器がない」と悩む方からの質問を募集しています。

年齢、立場、悩み事(ざっくりでも具体的なシーンに関してでも)を書いて、こちらにお送りください。

「ディレクション」は武器になるシリーズ

はじめてのディレクション
〜スペシャリストでないあなたが「見えないスキル」を形にする方法〜

第1回|器用貧乏で、何者にもなれない自分がコンプレックスです

第2回|ジェネラリストを名乗れるほど、すべてが完璧にできるわけではないのですが…

第3回|いろいろやりすぎて、何年経っても専門性が身についている気がしません

第4回|”進行管理”と”ディレクション”の違いはなんですか?〜前編〜

第5回|”進行管理”と”ディレクション”の違いはなんですか?〜後編〜

第6回|”リーダー”と比較するとわかる。”ディレクター”のこれだけははずせない必須スキルとは!?〜前編〜

第7回|”リーダー”と比較するとわかる。”ディレクター”のこれだけははずせない必須スキルとは!?〜後編〜

ディレクションスキルを学ぼう!

ディレクション入門①
ディレクションって、結局どんな業務なの?仕事内容を徹底解剖。

ディレクション入門②
キャンプの昼ご飯決めでわかる、ディレクションの質の話。

ディレクション入門③
プロの仕事から学ぶ、ロゴ制作のプロセス大公開

ディレクション入門④
ヒアリングの苦手意識を克服しよう!

ディレクション入門⑤
ネーミング&コピーライティングのコツ

ディレクション入門⑥
打合せで活きるディレクション力を学ぼう!

ディレクション入門⑦
プレゼンテーションの基礎・基本を学ぼう

ディレクション入門⑧
打ち合わせのまとめ方

ディレクション入門⑨
スケジューリングのコツを考えてみよう

we.の収益は全て「クリエイティブの価値を高め、広め、深める。」の理念の元、メディアwe.の運営や、それに付随する全ての活動に使わせていただきます。

ABOUT ME
企画・執筆|いずみの編集室 あさのみ ゆき
フリーランス編集者、ライター。専門は子どもの知的好奇心をテーマにした読み物。日常の中にある知らなかったわくわくや初めての発見を見つけられる誌面作りにこだわっている。 「私自身も、専門家としての突き抜けられなさに悩んでいる1人です。だけど、たくさんの専門家に取材をしてきて思うことは、自分がわくわくすることに根気強く向き合えば、必ず一人ひとりに合った道が見つかるということ。この連載を通して、共に”知らなかった自分の力”を発見していけると嬉しいです。」